【売り上げ4割増】
東京・虎ノ門の「フリーカフェ播磨屋ステーション東京霞が関」。昨年、東京店に併設した小規模カフェを今年5月にリニューアルした。
同社の“播磨屋助次郎”こと阿野拓夫社長(60)の「お客さまへの恩返し」の号令のもと、約200平方メートルの店舗の7割以上をカフェスペースに改装。全面ガラス張りにするなどして、常連の年配客だけでなく、サラリーマンや学生ら新規客を呼び込んだ。
店内は114席。「おかきは1人1皿。おかわりなし」がルール。おかき・せんべい8種類と、いれたてのコーヒーや紅茶、ジュースなどを無料で楽しめる。
同様のカフェは京都・烏丸丸太町、福岡・博多呉服町でも昨年スタートしたが、いずれも場所は東京同様の“一等地”。おかきをこっそり持って帰るヤカラはいないそうだが、これで採算が取れるのか。
集客数が一番多い東京店でも、平日の来店者1500−2000人のうち、半数はカフェのみの利用。それでも、口コミやメディアでの露出などを通じて、通販の受注が好調。5月の店舗全体の売り上げは前年比3−4割増えた。今夏には大阪・本町、年内には銀座に出店予定という。
この戦略について、消費者心理に詳しい富田隆・駒沢女子大教授(心理学)は「デパ地下の試食コーナーと同じですよ」と解説。「タダなら客も乗りやすい。その場で買ってもらえなくても、日本人は好意に報いたい気持ちが強い。後日の購買が期待できるし、店側は客の反応をタダで見られる。宣伝とマーケティング、購買を兼ねたプロモーションです」。
同社の広報担当者も「お客さまに喜んでいただくために始めたものですが、ボランティア活動ではありません」と笑う。関西人の柔軟な発想と商魂がハマった“新商売”だ。