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【長野】

リニアめぐる地域間の温度差露呈 説明会が県内一巡

2009年6月18日

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 2025年の東京〜名古屋間の開業を目指してリニア中央新幹線計画を進めるJR東海が、県内各地区の建設促進期成同盟会を対象に開いた説明会が一巡した。県が主張する南アルプスを迂回(うかい)し伊那谷を通るBルートか、JRの想定する南アを貫通するCルートか。「地元調整」が焦点になる中、説明会では地域間の温度差も浮き彫りになった。 (リニア中央新幹線取材班)

◆飯伊はCルートに期待、飯伊以外はBを推す

 「一市民としてCルートにまとまらないことに忸怩(じくじ)たる思いがある。AやBルートでは世界の笑い物になる」

 飯田市役所で15日に開かれた飯伊地区の説明会。柴田忠昭飯田商工会議所副会頭の発言に、会場は大いに盛り上がった。

 対照的に、飯伊以外の会場にはBルートを推す声が満ちた。ルートをめぐっては1989年、県による意見集約で木曽谷を通るAを断念し、Bに一本化。20年にわたり要望を続けてきた経緯がある。南アを貫通するCは当時、技術的に困難と指摘されていた。

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 諏訪地区の参加者は「鉄道は誰のものか。説明を聞けば聞くほどBルートだ」と都市部を重視するJRの姿勢を批判。上伊那地区の参加者は「人を物のように速く運べばいいのなら、直線で結べばいい」と皮肉り、中間駅設置による地域振興を主張した。

 中信地区では、青年会議所関係者から「地域振興について意見を言える場を設けてほしい」という要望も。調整のための説明会が、地域の思惑の違いを浮かび上がらせる皮肉な事態になっている。

 相違は、県とJRの間にもある。県は「JRが主体的に地域に出向き、調整を行うべきだ」と主張。一方、JRにとっての「地域」は一義的に「県」を指し、地域との直接協議には消極的だからだ。

 昨年12月に国がJRに出した輸送力などの4項目調査指示では「ルート・駅等に関し、地域と調整を図ることを前提」と、地元調整が要件に盛られた。県はこの文言を根拠にJRに地元調整を重ねて要請。5月29日に松本市で、沿線都県で初となる地元期成同盟会向けの説明会が実現し、続けて県内4地区の期成同盟会で個別の説明会が開かれた。

自治体の首長や地元県議らも参加した飯伊地区での説明会=飯田市で

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 JRの姿勢にも変化が現れているが「消極性は相変わらず」との指摘もある。上伊那地区では「ルート決定への前哨戦のつもりで来たが、技術的な話ばかりで期待外れ」といらだちの声が上がった。

 ルート別建設費の試算もまず県に提示し、個別説明会の予定は白紙。上伊那地区の同盟会長を務める小坂樫男伊那市長は「知事に(Bルートと)はっきり言ってもらうしかない」と村井仁知事の指導力に期待。一方、飯伊地区からは「最後の最後にリーダーシップを取るのはJRだ」との声も上がる。

 JRは18日、ルート別に試算した建設費を自民党リニア特命委員会に説明する予定で、リニアをめぐる動きは新たな局面を迎える。開業に向けて本格始動できるか、あるいは地域、県、JRの“同床異夢”がより深まるのか。地元調整の行方に注目が集まる。

 

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