トップ > メディア > Wikipediaの「要出典」、「独自研究」はやり過ぎ
メディア

Wikipediaの「要出典」、「独自研究」はやり過ぎ

松山大智2008/08/27
Wikipediaがここ1年程、百科事典にふさわしくない方向に向かっている。一部の編集者や管理者が要出典、独自研究のタグをべたべた貼って投稿者をつぶしている。このままではつらい思いをする人が続出することは間違いない。
日本 Web NA_テーマ2
 様々な人が情報を寄せ合って記事を完成させるフリー百科事典として、Wikipediaがある。しかし、ここ1年程度、百科事典にふさわしいとは間違っても言えない方向に向かっている。 

 まず、出典の明記があるが、最近では常識でわかること、複数の状況から容易に演繹的に答えが導かれるものであっても、一部の編集者や管理者は投稿者に一方的に罵声を浴びせ、「要出典」「独自研究」タグをべたべた貼って、記事をつぶしている。 

 その例として、料理の分野がある。「お好み焼き」について、幾人もの料理好き、グルメ、調理関係者などがノート欄で意見を戦わせていた。 

 広島風お好み焼きで、ひっくり返した後おもしで圧縮するのが正解か、あるいは蒸し焼きを目的としてあまり圧縮しないのが正解か、という議論が、「お好み焼きを作る人・食べる人」の立場から様々な情報や、自分の行きつけの店などを調べ、暗中模索ながら悩み続け、「どちらも正解ではないか」という感じにノート欄参加者は納得して終わった。

 しかし、その記事も、評論家や新聞などメディアの記述でない部分はすべて「要出典」「独自研究」がべたべた貼られ、過去の議論でがんばった人がいることは完全無視である。 

 また、評論家が中立でない場合、特定の主義主張や所詮、持論に過ぎないレベルの発言でも、「有名人である」というだけで出典にできる。 

 その一つの例として、プロ野球の応援団による「鳴り物応援」がある。この記事では、もと西鉄ライオンズの豊田泰光選手が批判したことで、「鳴り物を使うのは諸悪の根源」といわんばかりの記事であった。また、アメリカの観客は静かにしているという、全く事実に反することを主張として発言した豊田氏であるが、実際のアメリカの野球ではマナーが悪い場合も結構あることはメディアに登場しない。 

 そのため、豊田氏は間違った論理で、事実を曲げている、豊田氏が鳴り物を嫌うのはあくまで自分の主義であり、野球界全体で鳴り物批判があるわけではないという意味で、一部の人が「事実と異なる。反論がある」として鳴り物応援を支持する意見も書いた。しかし、一般の人はどんなに反論しても、有名人のようにメディアを持っていない。それが故に、「独自研究」べたべたである。 

 方言や地域文化など、社会的に有用である記事でも、「独自研究」である。もちろん出典がないの一点張りだが、そもそも方言にしても、金田一京助・春彦親子や柳田国男のような時代ではない。マスコミや、人口流動などで出身地から別の場所に住み、言葉がちゃんぽんになるといった、評論家より当事者である地元民の経験則のほうが信用できるといった問題である。個体差が激しいことで一定の文献にできるものでないことは常識ではないか。 

 これらについては、独自研究タグ、要出典タグをただはるだけで、ノート欄や井戸端で深い議論にもっていくことがない、いわゆる「削除主義」が横行している。確かにルールだが、「じゃあ、どうすべきか」という文章作りの現場を知らない人物が横行している現状である。 

 そのような状況について、井戸端欄やメーリングリストで相当数の非難が投稿されている。管理者の強権や、出典のあるべき姿についての疑問や意見がいくつも投稿している人がいた。しかしその人が関った記事の多くは「この人は信用できない」といわんばかりに否定的に処理され、各方向から非難されて八方塞になったが故にミスをした。そのミスが致命傷になり、つるしあげ的に長期ブロックになった。 

 その人も一つ一つにきちんと詰めた議論をしようとしているのに「議論を疲弊させる」と、管理者や常連はその人の挙げた問題を議論しようとせず、それ以上に傾聴すらしようとしない。もちろんWikipedia内ではいじめは厳禁だが、実際はつるしあげなどは珍しくないことがはっきりする状況である。 

 参加する殆どの人が「事実をありのままに、社会に伝えることで正しい知識を広めたい」という純粋な人が多いはずである。しかし、純粋な人ほど疑問や不満も出るものである。それについて改善はおろか傾聴すらしない今のWikipediaは死んだも同様である。 

 まじめに情報を伝えたい人は、Wikipediaから離れないと、つらい思いをする人が続出することは間違いない。

ご意見板

この記事についてのご意見をお送りください。
(書込みには会員IDとパスワードが必要です。)

メッセージはありません

6月8日〜13日 

編集部オススメ記事

記事ランキング

見た。読んだ。考えた。利用規定

IMAGINE バーは左記事を元に、JanJan内のすべての記事から連想検索した結果を表示します。