現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

麻生VS.鳩山―論戦の場を早く総選挙へ

 麻生首相と民主党の鳩山代表が、2度目の党首討論に臨んだ。

 日本郵政の社長人事で鳩山総務相が辞任したのを受けて、麻生内閣の支持率が急落している。朝日新聞の世論調査では19%にまで下がった。与党内からも公然と首相批判が噴き出すさなかの対決である。

 この一件を首相がどう説明するか。世論の視線も与党内の目も、そこに集まっていた。だが、首相の説明ぶりにはがっかりした。

 「判断ができない。判断がぶれる。総理の器としていかがなものか」と首相を優柔不断と批判した鳩山代表に対し、「民営化された株式会社に対し、政府の介入は最小限にとどめるべきだ」と応じた。

 ならばなぜ、西川善文社長の続投を認めないと、過激な発言を繰り返した前総務相を長く放置したのか。西川氏は社長としてふさわしいと考えるのか。そもそも首相は郵政民営化を進めたいのか、見直したいのか。

 国民が聞きたかったのはそうした点ではなかったか。これでは与党内の批判もおさえられまい。

 ただ、論戦がかみ合ってきたテーマもあった。社会保障の財源をどう工面していくか。首相は景気回復を前提に、3年後には消費増税を考えざるを得ないと語った。鳩山氏は「無駄遣いを徹底的になくす方向からスタートする。まずは4年間、消費税の増税はしない」と述べた。

 この問題は、2大政党の対立軸として総選挙の一大争点になりそうだ。

 首相の消費増税方針に対しては「それでは選挙が戦えない」という反発が与党内にある。本当に選挙公約に掲げられるのか、疑問が残る。一方で、節約だけで10兆円もの財源を生み出せるという鳩山氏の主張に、どれだけの人が説得力を感じるだろう。

 論戦の最後に、首相は財源問題と安全保障をテーマに3度目の党首討論を呼びかけた。対立軸をさらにはっきりさせる論戦はおおいに歓迎したい。

 とはいえ、いま日本に求められているのは、衆院を早く解散し、総選挙で示された国民の意思に基づいて新しい政治を築くことだ。だらだらと国会を続けることではない。

 今週末には、補正予算関連法案など重要法案にメドがたつ。残る課題は、北朝鮮に対する国連の制裁決議の関連で、船舶の貨物検査のための新法をつくるかどうかに絞られる。

 新法については鳩山氏も党首討論で協力を約束した。首相は迅速に法案をまとめ、民主党など野党との合意づくりを急げばいい。総選挙先送りの口実に使うのはもってのほかだ。

 本格的な討論の続きは選挙戦で。そして一日も早く、有権者の判断で決着をつけることだ。

米韓会談―冷静に土台を固めてこそ

 ミサイルや核実験で脅威の水準を高め続ける北朝鮮に対し、オバマ大統領と李明博大統領は一昨日の会談で、米韓同盟の強化を鮮明に打ち出した。

 米国は「核の傘」と韓国内外の軍事力によって韓国を防衛していく強い意思を示した。李大統領も「強力に対応する準備はできている」と語った。

 北朝鮮の軍事的挑発には結束して対応する。それは、北朝鮮の先行きが一段と不透明なためでもある。

 金正日総書記の健康不安は覆い隠しようもない。三男の正雲氏を有力候補に後継体制づくりが本格化してきた、との観測も韓国でしきりだ。

 立て続けの挑発行為の裏には、国内結束を誇示する必要がある事情が密接にからんでいるという見方が多い。

 権力の移行過程では何が起きるかわからない。更なるミサイル発射の動きもある。そんななかで、米韓がまず同盟を再確認したわけだ。

 今月末には李大統領が来日し、麻生首相と会談する予定だ。ここで日韓の連携もさらに確認する必要がある。

 いたずらに騒がず、今後ありうる北朝鮮のさまざまな事態を想定して、冷静に対応策を考える。このことにまず日米韓が協調してあたり、共通の基盤を広げておきたい。

 そのうえで中国やロシアとも連携する。6者協議参加国の北朝鮮を除く5者が地域の安全保障について共通認識を深めることも欠かせない。

 その点で米国が「核の傘」を強調したのは、単に日韓という同盟国への約束からだけではない。米国の戦略上、より大きな狙いがあろう。

 「北朝鮮の核」は「日韓の核」を誘発しかねないという懸念が米国内に厳然としてある。かねて日本には核保有論議を真剣にすべきだとの意見が自民党の一部にあるし、韓国でも保有論や核燃料再処理を求める声がある。

 「核の傘」を提供することによってその懸念を鎮め、核の拡散を防ぐ。それは米国の基本的な安全保障戦略でもある。

 いま必要なのは、国連安全保障理事会が採択した制裁措置を加盟国が着実に実行し、核放棄へ進ませることだ。

 オバマ大統領も李大統領も記者会見で、北朝鮮が挑発をして時を待てば代価を得られるという過去のパターンを繰り返さないと述べた。

 カギは米朝対話の糸口をいかに探り出すかにあろう。そのために中国にも動いてもらわねばならない。

 オバマ大統領は記者会見の冒頭、北朝鮮へのメッセージを発した。「核放棄と平和共存は、平和的な交渉を通じてのみ可能なものだ。このような機会は北朝鮮の前に開かれている」

 「機会」を生かすかどうかは北朝鮮次第である。この発信の意味するところを北朝鮮はどう聞いただろうか。

PR情報