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世迷言

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☆★☆★2009年06月18日付

 一時は上がりかけた麻生内閣の支持率がまた下がりだした。ご本人は「あそう?」と気にかけぬそぶりだが、内心はこたえているはず。世論調査の結果に政策が左右されるのは本末転倒だが、民草の心情を知る上で参考にはなろう▼政治は絶対ポピュリズム(大衆迎合)に流れてはならない。なにせ人間という動物は、いただけるものはいただきたい、払うべきものもできれば払いたくないという物欲の塊だから、政治にもそれを求める▼むろん政治はそれになるべく応えるべきだが、そうは問屋が卸してくれない。だからこそ入るを量って出るを制す必要があるのだが、そんな算数を無視して「もっと小遣いをあげよう」というのがポピュリズムである。ローマ帝国が崩壊したのも迎合が元だといわれる▼麻生内閣の支持率が低下したのは、鳩山総務相の更迭も一因とされるが、麻生さんが信念に基づいて下した断ならそれはそれで雑音に耳を貸す必要もなかろう。だが、総選挙を視野に入れた党内の綱引きにおもねった結果だとしたら、これは疑問符を呈されても仕方があるまい▼もし麻生さんが政治家として国を思い、一本筋を通すという信念の持ち主なら、総選挙の結果自民党が野に下ってもやむを得ないとハラを括るべきであろう。それができないから考えがブレ、決断のタイミングが遅れ、求心力を失っていくのである。いずれ政界の再編成は不可避である。国より先に自分のことしか念頭にないような政治家を淘汰するためのそれは「時の解決法」だからだ。

☆★☆★2009年06月17日付

 車で遠出をすることもほとんどなくあまり必要性も感じないが、あれば便利なのがカーナビ(カー・ナビゲーション・システム)だ。以前の車にはこれがついていて、きちんと目的地まで誘導してくれた▼初期の製品だったから、画面に地図が表示されるだけで、交差点の一歩手前で曲がったり、通り過ぎたりして、次のルートを再計算させることが多く、「なんともはや手の掛かる相手だな」と機械がぼやいていた。それにしても米国防省が開発したGPS(グローバル・ポジショニング・システム=全地球測位システム)を応用、民需に実用化させた日本はすごい▼東京でタクシーに乗ったら、そのカーナビの最新版を使っていた。交差点にさしかかると道路標識が表示されるのには驚いた。平面の地図が大事な所では、いわゆる3D(三次元)の画面となるのだが、これなら迷うことは確かに少ない。ロボット道案内人はここまで進化していたのだ▼驚いたのはこちらが世情にうといだけで、進化の裏には地図会社の努力があったのだ。そして描画のためにはアニメの技術が高度に利用されている。国土が狭い日本ならではの先鞭で、広大な面積の国では開発も普及もままならぬはず▼東京駅構内にある待ち合わせの場所を探すのに苦労した後、携帯用のナビがあることを知ったが、携帯電話にその機能がつき始めた。映画「ターミネーター」の殺人ロボットはすべてコンピューターで制御されているが、そのうち人間もそうなり、やがて気が付いたら猿に還っていたということになるのは時間の問題か。

☆★☆★2009年06月16日付

 「小さな親切大きなお世話」という冗句があるが、こんな小さな親切があれば、年寄りにとって大変ありがたいのだがと思うことがある。それは各種申請書類の更新時期にいつも感じることである▼たとえば○○番号、申請内容の種別、具体的内容などで、確認のため色々な書類をひっくり返して調べなければならない。きちんとした性格の持ち主ならそれらをファイルし、整理し、たちどころに検索できるだろうが、当方のようなずぼらな人間は、どんな書類もいっしょくたにしているから、探し出すのが一仕事▼大概の書類は内容的に変更がないことが多いので、前回提出の控えを引っ張り出せばことは済むのだが、その記録を怠っているのでさあ大変。さて保険証番号は、年金番号は、会員番号は等々「元帳」をあたらねばならない。時にはその元帳が見当たらなくなっていたりする▼だからこれはお願いなのだが、前回の提出書類のコピーを同封していただき、それを見て変更がなければ「前回通り。変更なし」という個所に丸をつけるだけにしてほしいものだと思うのである。むろん提出する側が提出前にコピーをとるか、記録しておけばいいだけの話なのだが、世に不精の種は尽きまじ。記載が済むと「能事終われり」というタイプが少なくないはず▼自分の「かばねやみ(不精)」を棚に上げて、「かくあるべし」とはとても言い出せるものではなく、ここは「お願いします」と率直に頭を下げて「小さな親切」に期待するのである。

☆★☆★2009年06月14日付

 鳩山総務相の辞任を国民はどう受けとめたのだろうか。「理解してもらえないので辞表を提出した。潔く退きたい」とテレビで語っていたが、翌日の新聞を見ると「事実上の更迭」とあった▼想定はされていたが、どこまで頑張り通すか、意地を見せるか注目していた。だが、多勢に無勢。「党内世論」とやらに抗えず辞表を叩きつけたというところだろう。しかし結果として「男を上げた」と賛辞を贈りたい。このところ閣僚の辞任というのは、何か不祥事をしでかしての引責がほとんどだっただけに同列に扱えないのはむろん▼麻生首相に逡巡があったのは当然だろうが、しかし盟友をかばうべきだったと思う。事態は「ようやく解決した」という次元にとどまらず、自民党にとって不利な状況を招いたと言わざるを得ない。いわゆる「判官贔屓」の感情が国民に生まれ、鳩山さんに同情が集まる一方、党内世論の酷薄さが浮き立つからだ▼「鳩山理論」は正しい。かんぽの宿一括売却問題一つとっても国民の財産を叩き売るという行為を国民の誰一人支持するわけがない。だから日本郵政・西川社長の責任を問い、続投に待ったをかけることは首尾一貫しているのである。問題は正論をねじまげた側がその非に気付かないことである▼「泣いて馬謖を斬る」というのは、斬る側も斬られる側も互いに相手を慮って正道を守るからこそ格言として残ってきた。だが、誰に気兼ねするのか「ご政道」が横道に曲がった。浪花節も時には必要なのに。

☆★☆★2009年06月13日付

 「昆虫記」を書いたファーブルではないが、昆虫をじっくり観察したら面白かろうと思った。自分が座った足下をせわしく動き回る蟻のスピードと馬力に改めて感心させられたからである▼自分よりはるかに大きく重い荷物を軽々とかついで(くわえて)巣に運ぶ蟻の強力ぶりにはただただ感心するばかりだが、そのスピードはさらに驚異的で、歩行動物の中で世界最速記録保持者は蟻ではないかと考えたりした。体長一aほどのこの小動物が長さ二十三aの敷石を二、三秒で渡りきった。人間に換算したらどの程度の速さなのか▼テレビで同じような計測をしていたらしい。ゴキブリを馬の大きさに拡大して競わせたら馬の倍以上のスピードだったという。あのうろちょろしているゴキブリすらそうだから、蟻のそれはそんなものではあるまい。猪突猛進なんて甘い、甘い。蟻から見たら「豚突猛進」程度だろう▼この蟻のパワーを参考にして何か発明はできないかと妄想した。鳥を真似て飛行機が生まれたように、動物からヒントを得て多くの機械、道具が生まれた。パワーショベルのスムーズな運転は、クモの巣から操作系統を発想したという。キャタピラーもクレーンも、毛虫や鶴が機械に化けた▼段差を苦にしない四つ足のクレーンは、四足動物の動きを借りたものだが、アント(蟻)の動きを応用した道具もアントかなりそうな気がする。足が速くて力持ち。そんな利器が生まれれば人間界にとってアリがたい恩恵をもたらすだろう―などと考えてじっと手を見る。

☆★☆★2009年06月12日付

 不要不急の施設に大金を投じる。税金の無駄遣いの典型といえるのが、文化庁が計画している「国立メディア芸術総合センター」。案の定というか当然というか野党からだけでなく、自民党内からも中止の要求が続出している(十一日付岩手日報)▼これがどんな施設かというと漫画やアニメなどサブカルチャー(大衆文化、若者文化)の「殿堂」とか。まさか漫画好きの麻生首相におもねったか、その意を体したわけではあるまいが、そんなことに金をかける意図が理解できない。漫画やアニメがどうのこうのというのではない。他にやることがいっぱいあるだろうという意味においてである▼しかもどんな施設にするかという構想もないまま、予算だけが先行しているというのだからなおさらだ。その予算が百十七億円というとんでもない額で、まともな人間ならまず現状打開にその金を使う▼初めに予算ありき。構想はこれから練るなどという、こんな野放図な計画は即刻中止すべきで、仮に建設されたとしても誰が見に行くのだろう。行かないから大赤字になるのは明白。それこそ漫画である▼そもそも税金とはどこから生まれるのかという認識が役所には欠如している。これだけの巨費を集めるのにどれだけの犠牲が払われるのか。税金とはまさに「民脂民膏」であることを忘れてはなるまい。その税金さえ払いたくても払うことのできない生活保護世帯がこのところ急増しているという。そんな時にこの能天気はどうか。

☆★☆★2009年06月11日付

 地方都市はどこも中心市街地が例外なくシャッター通りと化し、往時のにぎわいをとどめるよすがはシャッターに残された店名のみだ。かって「○○銀座」などと呼ばれたその元繁華街を再び蘇らせる方途がいま問われている▼中心市街地の地盤沈下は考えるまでもなく、急速なモーターリゼーション(車社会化)のせいである。「駐車場がないと客が来ない」と商店主たちがその確保に躍起となったのも今は昔の話。郊外に大型店が軒を連ねて商圏が移動しはじめると、一軒また一軒と看板が下ろされていく▼その過程は、一足も二足も早く車社会を成立させていた米国に先例を見ることができた。遅れて日本もその通りの結果を招いたのだが、その米国では再び中心市街地が見直されてきているというから、やがて日本にも同様の現象が起きてくるはずである。問題はその再生のテンポをいかにして速めるかで、これは行政に課せられた最大のポイントであろう▼再生を促す元は言うまでもなく高齢化社会の到来である。つまり高齢化によって車を運転できなくなると、なんでも歩いて用の足せる場所に住みたくなるのが道理で、その希望を満たせる場所が他ならぬ中心市街地というわけである▼生鮮三品があって、最寄り品があり、郵便局、診療所などが身の回りにありさえすれば生活はできる。そしてなにより人の輪ができるというコミュニティへの回帰が強まる。だからこそ、再生のスピードを高齢化そのものに委ねるのではなく、知恵を働かせるという競争がこれから自治体間に起こることを期待したい。

☆★☆★2009年06月10日付

 意地の張り合いということも時には必要だ。これは引いた方が負けとみなされるから、どちらも一歩も引かない。鳩山邦夫総務相と日本郵政の西川善文社長の攻防もそれで、さてこれはどう決着がつくかみものだ▼西川社長の続投に待ったをかけたのが鳩山総務相で、放っておけば相討ちともなり痛み分けともなるだけに、結果の飛び火をおそれて仲裁者が続々▼両者が犬猿の仲になったのは、むろん「かんぽの宿」の一括譲渡問題。「不正譲渡」と鳩山さんがかみつき、認可しないと一刀両断した。次に東京中央郵便局の建て替えに再び待ったをかけ、返す刀でこんどは西川さんの続投にまた待った。一見意趣返しに見えるが、これほど意地を張る閣僚もきょうび珍しい▼やることなすことに文句をつけられて、さすが西川さんも意地を見せてか後に引かないものだから、麻生首相も困惑、自民党内でも鳩山さんの態度をめぐって賛否両論が渦巻きだした。こういう時には「落としどころ」をわきまえた役者が登場して「幕引き」をするのだが、いまの同党内には大根役者しかいないらしい▼なにせ「座長」がおろおろしているのだから、これは幕間も長くなるわけである。幕の内弁当でも食いながら次の開幕を待つしかないが、それにしても筋書きの読めない芝居ほど面白いものはなく、舞台でにらみ合ったまま身動きもしないご両人に観客は「音羽屋!」「播磨屋!」と声もかけられず、ただはらはらして見守るばかり。

☆★☆★2009年06月09日付

 宮城県の同業社、大崎タイムス社主催の千昌夫チャリティーショーに招待され、そのあと開かれた千さんを囲む夕食会の席上、隣席の大崎市幹部から同市が人口増加傾向にあると聞かされて羨ましく思った▼お定まりの人口減に同市も悩んでいるのだろうという前提で質問したところ意外や意外、かなりまとまった社会増になりそうだというのだから、原因は何かと聞き耳を立てたのは当然。むろん、それが当地にとって参考になればという淡い期待を抱いてのことである▼しかし世の中はそんなに甘くはない。新市民増加の秘密は、大手電子部品メーカー、アルプス電気が全国に散らばる工場集約を図り、大崎工場がその重要拠点になるためだという。技術開発部門のエンジニアをここに集めることになり、家族その他を含めると人口は千人以上の増になりそうだというから、これは小さな村が一つ誕生する勘定▼さらに、トヨタ自動車の生産子会社、セントラル自動車が隣の大衡村に本社と工場を移転するため、その従業員や家族たちを呼び込もうという計画も生まれ、二十万人都市を目指す大崎市は、目標に一歩近づいたと同席の市長も大気炎を上げていた。一夜にして不夜城が出現するのも地の利というものだろう▼翌日の帰り道、車が県境を越えて気仙町に入ると突然空が光り輝き、まぶしいほどの光芒を降り注いだ。まさに南国の空である。なんという光の違い。思わず、人口減?過疎化?それがどうした?ここには竜宮城があるではないかDそのうちタイやヒラメが舞い踊るようになるだろう、とうそぶいていた。

☆★☆★2009年06月07日付

 現職の巡査部長がひったくりをした。それを高校生二人が追いかけて捕まえ、その一人がいわく「警察官がひったくりをするなんて世も末だ」。いい大人が高校生にたしなめられている▼「泥棒を捕らえてみればわが子なり」という古川柳がある。これは悲劇である。最近も飲酒運転の警部補が部下に逮捕されるという事件があった。上司を捕らえた部下の複雑な表情が目に浮かぶ。飲酒がそうさせたのかどうか、タクシーや運転代行の代金を惜しんだばかりに職業も退職金も棒に振るというのは割に合わない▼その割に合わないのが使い込みだろう。その原因のほとんどがサラ金やバクチで借財をこさえた結果で、犯行がばれて全額弁済の上に懲戒免職という、これほど情けない話もない。全額弁済の方便があるのなら、途中で弁済しておけばいいはずなのだが、親兄弟にも言えず、穴埋めのためまたバクチに手を出して…▼職業倫理というのは、精神的、経済的に正常である場合に作用するが、いずれかが破綻するともろくも崩れ去るもののようである。「世も末だ」の例も、金に困ってのことだろうが、よりによってひったくりとは。なに?政治家や役人も税金のひったくりをやっている?▼いずれにしても綱紀や倫理といったブレーキも、欲というエンジンの馬力を抑えきれない時があるようで、このブレーキを強くするのが家庭教育におけるしつけであろう。だが、世は燃費や馬力にばかり気を取られていまいか?


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