きょうの社説 2009年6月18日

◎子どもの携帯規制 保護者の無関心が最大の問題
 小中学生に携帯電話を持たせない努力規定を盛り込んだ「いしかわ子ども総合条例」の 改正案が、石川県議会に議員提案された。県側も有害サイトへのアクセスを制限するフィルタリング規制を強化する改正案を提出している。深刻化する携帯使用によるインターネット上でのいじめや犯罪から子どもを守るには、安易な携帯所持は控えるべきで、「ネットトラブル」の被害防止につなげる契機にしてもらいたい。

 今回の条例改正案のほか、県教委は今年度からネット上のパトロールを行っている。対 策を講じることは大事だが、責任者である親が子どもの行動やネットの問題に関心を持たなければ、健全育成の実効性は上がらない。未成年者をネットトラブルから防ぐうえで、最大の問題は保護者の無関心ともいえる。今後は子どもや教職員だけでなく、保護者への啓発活動がより求められている。

 議員提案の改正案は「保護者は小中学生に防災、防犯、その他特別な目的を除き、持た せないよう努める」などと明記した。罰則のない努力規定であるが、子どもに携帯を持たせるのは保護者の責任であることを十分認識して、適切な判断をくだす必要がある。

 県側の改正案は、18歳未満の子どもの携帯のフィルタリングを解除する場合は、保護 者が事業者に書面を提出することなどを義務付ける。悪質な場合には、事業者名を公表できるため、一定の効力が見込まれるが、フィルタリング規制に関しても保護者の関心の有無が問われる。簡単にアダルトサイトや出会い系などの有害サイトにつながるネットの怖さや犯罪の手口などを知っていないと、子どもが犯罪に巻き込まれかねない。

 子どもを守るための保護者側への取り組みには、着実な成果を期待したい。県PTA連 合会は「小中学生には原則携帯電話を持たせない」と宣言し、野々市町の“ののいちっ子を育てる”町民会議は以前から同様の運動を展開している。地域の地道な活動の輪を広げ、家庭でネットの危険性や適正な利用法について話し合う機会を増やしてほしい。

◎党首討論第2弾 受け身だった麻生首相
 麻生太郎首相と鳩山由紀夫民主党代表による2回目の党首討論は、もっぱら鳩山代表が 攻め、麻生首相が受け身に回った印象が強い。政策の裏付けとなる財源問題について、無駄を見直すなどすれば20兆円ほどの財源は確保できると主張する鳩山代表に対し、麻生首相は裏付けのない論議は無責任と批判した。

 「友愛」の理念をにじませながら、「人の命より財源が大事か」と迫る鳩山代表が全般 的に押し気味で、麻生首相は防戦を余儀なくされたようにみえる。特に4年間は消費税を上げず、無駄の排除を徹底してやるという鳩山代表の意気込みは、国民の共感を得たのではないか。

 鳩山代表は、一般会計と特別会計を合わせた210兆円から、「10兆円ぐらい削減で きる」と述べたが、ある程度具体的な内訳を示し、単に大風呂敷を広げているのではないと証明してほしい。

 麻生首相は、きちんと財源を提示して初めて政策が実現すると訴えた。鳩山代表が財源 を明示しないことへの批判である。ただ、正論ではあってもそこを強調すればするほど、政府に「無駄はない」と言っているように聞こえる。国民は、無駄を無くそうとする努力が弱いと受け取るだろう。

 鳩山代表の主張は、「コンクリート(箱モノ)より人を大事にする社会」など、多分に 観念的で、万人受けを狙ったテーマが多く、安全保障や外交などの問題は、避けて通ろうとするようにみえた。麻生首相はこの「弱点」を十分突くことができなかった。

 日本郵政の社長人事に関して、鳩山代表は「政権を獲得した時には、西川善文社長には 辞めていただく」と明言した。麻生首相は、民間会社への「政治介入」に懸念を表明し、慎重な対応が必要と切り返した。鳩山代表は、国民新党との関係もあって、そう言ったのだろうが、クビを切る正当な理由が現段階であるとは思えない。

 今回の党首討論は、論点が整理され、聞き応えがあった。議論がかみ合わず、中身に乏 しかった前回の反省が生かされた。双方がヤジを自重したのも良かった。