2009年6月5日6時35分
石川県議会の自民党会派が、小中学生に携帯電話を持たせないよう保護者に努力義務を課す条例改正案を、15日開会の6月議会に提案する。同会派は議席の過半数を占めており可決される見通しだが、県は「憲法違反のおそれもある」と慎重だ。県によると、携帯電話の所持規制に踏み込んだ条例は全国に例がないという。
石川県には、青少年の健全育成を目的とした「いしかわ子ども総合条例」があるが、条文で携帯電話の所持や使用に触れていなかった。昨年9月、県内で携帯サイトの掲示板への書き込みをめぐる高校生同士の殺人未遂事件が発生。これを受けて県は、18歳未満が使う携帯電話のフィルターリング規制(有害サイトの閲覧規制)を強化する改正案をまとめた。
一方で、自民党会派は議員提案として独自の条例改正案を準備。小中学生に携帯電話を所持させないという保護者の努力規定を明記する。罰則規定は設けないという。同党県連政務調査会長の下沢佳充県議は「携帯電話は、社会的に未熟な小中学生の犯罪やいじめの温床になる。校内で使用を禁止しても家で手にできるのでは意味がなく、親の意識改革が必要」と話す。
県は「憲法の知る権利や財産権に抵触するおそれがあるし、携帯電話販売店から損害賠償を請求されることもありうる」として、自民案と距離を置く。しかし、自民会派は46議席中27議席を占め、可決される可能性が高い。
金沢市内の主婦(50)は「部活動や塾で帰りが遅くなる子に、携帯が必要な時もある。どんな場合には所持できて、どんな時はだめなのか基準を示してほしい」。「学校裏サイト」などの著書があるNPO法人「青少年メディア研究協会」の下田博次理事長は「たまりかねて打った一手だろうが、携帯との付き合い方や危険性を親子で考えさせるような施策でなければ問題は解決しない」と話す。(菊地直己)