第16回 アルコールは仕事の後に
会社の先輩の話です。
その先輩の元いた会社(組込み系の小さな会社と言ってました)で,ある日,やっとこさ組み上がった試作基板とソフト一式を抱えて,客先でレビューを実施したときのこと。
タイトな日程で常にギリギリで設計,製作,テスト,etc.…を行っていたため,ありがちな深夜に及ぶ残業,休日出勤,期限直前の徹夜のオンパレードがことのほか厳しく,夕方に客先に着いた時にはヘロヘロだったと聞いています。
ところが,客先に着いたら何故か皆さん出来上がっている様子。聞けば,何か祝い事があったらしく,社内は半ば無礼講状態でビールやつまみがとっちらかっていたようで…。
さっさとレビューを済まして早く寝たい,その一心だった先輩も,普段とはうって変わってねちっこく絡みついてくる客先担当者の勧めに降参してビールを数本あける羽目になったそうです。
ほとんど寝てない中,ギチギチの開発をこなしてきた先輩に,その数本のビールは危ないクスリのようにドガンと効いたそうです(本人曰く『いや,クスリなんてやったこと無いけど間違いなくそれに近い,いや,超えるかも』と,一種恍惚とした表情で語っていたのが印象的でした w)。
ヘロヘロなのにアルコールを注入され,麻痺一歩手前までいった頭と体を振り絞ってレビューの準備,PCを起動して,3枚ある基板取り出して,基板間をケーブルでつないで……,固い,うまく嵌らない。
普段なら力を込めつつも優しく,という相反する動作を,長年鍛えたフィンガーテクニックで実践しているところですが,残念,ヘロヘロだけならまだしもトドメのアルコールによって(と先輩は主張していましたw),次の瞬間「バギッ」という音と共に,見事に2枚の基板が割れてしまいました。
一瞬で朦朧としていた頭が醒め,事態を把握した瞬間,先輩の“今夜は自宅で寝る”という儚い希望は,“デスマーチ”という言葉に変わったとのことです。合掌。
後日談として─
客先もさすがに自分達が勧めたせいもあり,それほど厳しいお咎めは無かった模様。「ただ『ああ,じゃ今日はダメですね,ハッハッハ…』と,笑顔でまだ飲んでいるグループに合流していく客担当を見て殺気を覚えた」と笑っていない目で語る先輩,怖かったです。
でぶパンダ(男/30歳/プログラマ・SE)
こ,これはかなり悲しいお話ですね。
タイトルに書いてある通り,アルコールはやはり仕事の後が幸いかと。それならば,さぞかしおいしいお酒だったでしょうに…。
かく言う私も,家で仕事をしてるメリットを活かして,家族とはなるべく食事をともにするようにしてるんですが,たまにですね,締め切り直前とかにですね,晩飯にですね,す…っごくオツマミとして具合の良さそうなのが出たりすることがあったりした時にですね…。
多くは語りません。語りませんよ。
※この連載は,最新記事を含めて5回分の公開になります。
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