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社会

人種タブー、差別表現タブーの今を追う!


『ちびくろサンボ』を殺したのは抗議事件か、メディア自身か

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05年刊行の瑞雲社版『ちびくろサンボ』

 長い間マスメディアの中に存在してきた、差別的ともとれる表現をめぐるタブー。しかし、メディア側の過剰ともいえる自主規制の結果か、近年では大きな問題に発展することも少なくなってきている。かつてマスメディアのあり方に一石を投じたあの団体は、今どうなっているのだろうか?

 * * *

 マスメディアがその活動において最も気を使うのは、差別的とされる表現や、人権侵害にあたる表現だ。これまでに、テレビから新聞、ラジオ、出版まであらゆるメディアが、差別や思想・信条などにかかわる表現にからんで、各種団体からの抗議を数多く受けてきた。出版業界でいえば、1988年に起こった『ちびくろサンボ』(岩波書店ほか)の絶版が有名だろう。黒人差別の根絶を目指すとする人権団体「黒人差別をなくす会」からの、タイトルや挿絵が黒人差別を助長するとの抗議をきっかけに、岩波書店が絶版を決定した事件だ。

 この件で抗議をした「黒人差別をなくす会」が、黒人たちによる団体でなく、大阪府在住の日本人3人家族から成る団体だったことは、当時話題になった。それまで、マスメディアに影響を及ぼすほど大々的な抗議活動を行うのは、団体数が多く活動も派手な右翼団体や、長い歴史を持つ部落解放同盟などの当事者団体が主だったためだ。

 中でも、解放同盟による抗議活動を振り返ると、古くは67年の絵本『ひげのあるおやじたち』(今江祥智著、福音館書店)絶版回収から、近年では05年の『サンデープロジェクト』(テレビ朝日)糾弾など、その数はかなり多い。解放同盟がメディアに与えてきた影響は強く、差別的とみなされる表現を行った関係者などを呼び出し、責任と差別への認識を問う"糾弾"と呼ばれる手法は70年代から恐れられていた。多くは「特殊部落」など被差別部落に対する差別表現を使ったケースへの抗議だが、と畜場へのかたよった表現や誤解なども抗議活動の契機になった。

 この解放同盟の糾弾を公に問題視したのが、90年に発売されたオランダ人ジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の著書『日本/権力構造の謎』(早川書房)だ。この本で氏は、糾弾は、表現の自由を奪う強引なやり方だと指摘。解放同盟は同書に含まれる差別語の使用や被差別部落所在地の不正確な記述などと併せてこれを問題視し、早川書房に抗議を行った。最終的には著者、出版社、解放同盟の間で話し合いが持たれ、公開討論会を行い、その議論を小冊子にして第二版に挟み込むという、それまでにない解決方法が取られた。これは出版における表現の自由と差別表現問題を解決する画期的な手法だったが、その後の事例に受け継がれることはほとんどなく、以降も当該記事の削除や出荷停止などのやり方で抗議団体の要求を一方的にのみ、事態を収拾する方法が大多数を占めた。以下でそれらの数例を見ていこう。


欄外注釈に不用意な表現 編集者の意識の低さが露呈


 93年に起こった小説『アイヌの学校』(長見義三著、恒文社)絶版事件は、アイヌ差別に関連した抗議に端を発する。同書は、もとは38年に発行された小説の復刻版で、バロオ土人学校存続の奮闘を描いている。文学作品としては評価が高いが、アイヌの容姿などに関する描写があまりに偏見や侮辱に満ちているとして、北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)札幌支部が版元に猛烈な抗議を行った。小説の巻末には人権に配慮して「人種、身分、職業、身体障害などに関する語句や表現は時代背景と作品の価値を考えあわせてそのままにした」と付記していた上、長年ウタリ協会の人々と親交を持ち、著作に関してそれらのアイヌ人から好意的な意見をもらっていた著者の作であったが、最終的に絶版・回収となった。

 96年には、『タイ買春読本』(アジア性風俗研究会編、データハウス)というルポルタージュが、女性差別などを理由に絶版となった。内容は日本人旅行者がタイの風俗街でカモにされやすいことを受けて、注意を喚起したものだが、買春を助長する本であるとして、94年の発売直後から「タイ女性の友」などの人権擁護団体が抗議。「『タイ買春読本』に対する抗議と報道の一部始終」と題して各団体との話し合い内容を盛り込んだ全面改訂版を出したが、2年後、絶版が決定した。

 少々異質なところでは、「別冊フレンド」96年3月号(講談社)に掲載された連載マンガ『勉強しまっせ(ハートマーク)』(みやうち沙矢)が、少女マンガにしては珍しく、抗議を受けて謝罪・連載中止となっている。登場人物の兄が大阪市西成区に住んでいるというエピソードに際し、西成区の説明として編集部が「※大阪の地名 気の弱い人は近づかないほうが無難なトコロ」と、欄外に注釈を入れた。これに対し、西成区の住民などが発行元の講談社に抗議。西成区には大きな被差別部落と、釜ヶ崎というドヤ街が存在するが、このときは、読者である当該地域の子どもたちからも声が上がった。一連の抗議やその後の話し合いを経て、連載は中止、講談社は同誌8月号に「お詫びと連載中止の経過」を掲載し、事件は一応の決着を迎えている。


メディアと団体の協力でトラブルの減った00年代


 しかし、00年代に入って以降、各種団体による抗議活動は目立たなくなってきている。昨夏の映画『靖国』をめぐる騒動が、一部で注目を集めたくらいで、大々的な事件に発展することはほとんどなくなってきた。解放同盟も例外ではなく、マスコミを騒がすような糾弾活動は、近年では目立たない。その理由を、人権問題に絡んだ抗議事件に詳しいジャーナリストの長岡義幸氏はこう分析する。

「出版界でいえば、差別的な問題表現などがあった場合、糾弾会の前に確認会という話し合いの場が持たれ、ほとんどそこで事態を収拾しています。解放同盟との窓口的な組織として、大手出版社を中心に出版・人権差別問題懇談会が作られ、部落差別にかかわる表現について、日常的にやり取りをするようになりました。これが出版社にとっては実質的な危機管理につながり、結果的に大きなトラブルは少なくなったのです」

 ただ、抗議活動が目立たないのは、解放同盟の内部事情が関係しているとの見方もある。
(続きは「サイゾー」6月号へ/取材・文=笠谷寿弘)


ちびくろ・さんぼ


復刊。


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2009.06.16 火   はてなブックマーク BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク livedoor クリップ みんトピに投稿 newsing it! この記事をChoix! 友達に知らせる