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【社説】

景気動向 選挙目当ての楽観論か

2009年6月18日

 政府が六月の月例経済報告で「景気底打ち」を宣言した。日銀は下げ止まりを認めつつも「全体としては厳しい状況」との判断だ。近づく衆院解散・総選挙をにらんだ思惑含みの楽観論では困る。

 十七日に発表された月例経済報告は「景気は厳しい状況にあるものの、一部に持ち直しの動きがみられる」との基調判断を示した。報告をまとめた内閣府に確認すると、担当者は「“底打ち”と考えていただいて結構です」という。

 生産と輸出が持ち直していることが根拠のようだ。鉱工業生産が上向き、輸出もアジア向けが反転し、米国や欧州向けは下げ止まりつつある。

 与謝野馨財務・金融・経済財政担当相が一足早く「(一〜三月期が)底打ちだった」と会見で語った認識を裏打ちした形である。

 しかし、これはいかにも「選挙目当て」の臭(にお)いがする。政権与党の支持率が急落する中「景気は上向いてきた」と強調して、人気を挽回(ばんかい)しようという政治的思惑に引っ張られたのではないか。

 暗い材料が多いことは当の経済報告自体が認めている。企業の設備投資や住宅建設は「減少」から「大幅に減少」へ判断を下方修正し、消費者物価も「横ばい」から「緩やかに下落」に修正した。デフレ傾向が加速し、なにより企業収益が極端に減少している。

 「持ち直した」という生産も「生産活動が極めて低い水準にあることなどから、雇用情勢の一層の悪化が懸念される」と悲観的側面を付け加えているほどだ。

 同じ日に金融経済月報を発表した日銀は「景気は大幅に悪化した後、下げ止まりつつある」としながら、国際的な金融経済情勢など下ぶれリスクの高さを強調した。前日発表の経済同友会のアンケートでは「景気は横ばい状態」という回答がもっとも多かった。

 東京証券取引所の平均株価が一時、一万円台を回復するなど、たしかに明るい材料もなくはない。ただ、昨年秋から急激に悪化した景気の悪影響が本格的に企業経営に及ぶのは、むしろこれからという見方もある。

 経済危機の発信源になった米国や欧州も景気後退が長期化するリスクが高まっている。過剰だった米国の消費水準は「二度と元に戻らない」という見方が有力だ。

 政府が期待交じりの楽観論に傾き過ぎると、もしも再び景気が下り坂になった場合、政策対応が遅れる懸念がある。ここは冷静に推移を見守るべきだ。

 

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