生活防衛するなら新下町に住め。タダの場所がいっぱい
長引く不況の影響を受け、生活防衛のバイブル本が売れている。中でも『これでいいのか東京都足立区vs葛飾区vs江戸川区』(マイクロマガジン社)は、不況下の生活に役立つ情報が満載。今の時代……「新下町」に住むのが一番なのかもしれない。
17日に政府が発表した月例経済報告では「悪化」の文字が7カ月ぶりに消えたが、景気回復の実感は薄い。そんななか“生活防衛のバイブル”が売れ行き好調だ。『これでいいのか東京都足立区vs葛飾区vs江戸川区』(マイクロマガジン社)。一見すると、同地区をコキおろすかのような本だが、よくよく読むと不況下の生活に役立つ情報があふれている。不況の時代を生き抜くには「新下町」に住むのが一番なのかも!?
『これでいいのか東京都足立区vs葛飾区vs江戸川区』で紹介
ヤンキーがたくさん、交通が不便、東京23区の“裏メダリスト”――など、同書には東部3区への否定的な文字が躍る。ところが「3月下旬の発売以来、好調に売れています」(編集部)という。なぜか。一部の住民は自虐的な笑いのネタとして楽しんでいるようだが、じっくり読むと表のように有益な7条件が浮かび上がり、同地区以外の住民も買い求めているのだ。
これまで足立、葛飾、江戸川3区の総称はなかったが、同書を編集したマイクロマガジン社地域批評シリーズ編集部は「新下町」と名付け、調査を進めた。その結果、よく指摘される犯罪件数の多さは、実はその大多数が自転車泥棒で、「凶悪犯は意外に少ない」ということが分かった。
特筆すべきは物価の安さで、東京都が今年1月に調査した23区内のコシヒカリ5キロの平均価格2659円に対し、足立区は1680円。また、独立系のディスカウントストアが多いことも判明。大手とは違い、小回りの利く店舗が頻繁に特売を打つことが分かった。
生活費を圧迫する住宅関連などの費用も安い。葛飾区ではワンルーム物件なら6万円以下がザラ。土地も駅に比較的近く、坪単価100万円以下で探せる。こうした宅地は世田谷、杉並区内ではまず見つからない。平地ばかりで自転車が有効活用でき、車ナシのエコ生活も可能。
さらに、葛西の海や荒川、江戸川の河川敷、充実した図書館など、タダで過ごせる場所が多く、レジャーも格安。大量の河川敷グラウンドではスポーツも盛んに行われており、江戸川のリトル・リーグはレッドソックス・松坂大輔というスターを生み出した。
同編集部は格差社会が問題化した2007年、実際に格差が顕著な地区として足立区を調査し、『日本の特別地域 足立区』を出版した。特定エリアを扱った本としては異例の1万5000冊を売り上げたことから、その後、葛飾区、杉並区、横浜市……とシリーズ化。旅行情報誌『るるぶ』の向こうを張った“裏るるぶ”として人気となり、今回、新たに江戸川区に足立、葛飾両区の最新情報を加えた形で同書をまとめた。
高田泰治編集部長は「私は東急田園都市線沿いに住んでいますが、気軽に立ち寄れる飲み屋も少なく、身なりを整えてお利口さんにしていなければならない。人に優しく、物価が安くて不況に強い新下町の魅力を知っていただきたい」と語る。ちなみに、ある大阪府民によると、大阪の新下町には「西成区、堺市、岸和田市が相当するだろう」という。
新下町が住みやすいワケ
(1)治安は実は悪くない
(2)日用品の物価が安い
(3)土地、家賃が安い
(4)海や川など自然が豊か
(5)一面平地で自転車移動に最適
(6)行政サービスがよい
(7)人情が厚い
関連記事
「幽霊なんて出ませんよ」――格安家賃の“事故物件”を探してみた
前の住人が部屋で亡くなったため、格安で貸し出される“事故物件”。安いとはいえ生理的な拒否感から避ける人が多いと思いきや、家賃の高い東京では事故物件は人気があるようで、中には10倍を超える抽選をくぐり抜けなければ借りられない物件もあるようだ。- 合コンでモテる人の部屋には「○○」がある