「誘導尋問」の「誘導」とは何か
「誘導尋問」の「誘導」とは何かを意識することなく「誘導尋問」とは何かを自己流に判断して分かった気になっている人が多いようです。基本的には、①発問者がその望む回答を回答者に明示又は暗示する、②回答者が発問者の意を酌んで発問者の望むとおりに回答することを発問者が期待できる、という2つの要素が必要です。
「Yes/No Question」の場合に誘導尋問になりやすいというのは、疑問詞を用いた質問がなされた場合には疑問詞に対応するものとして回答者が回答すべき要素を、発問者が疑問文の中に折り込んでしまう(そのため、疑問詞に対応するものとして回答されることを発問者が期待している要素を回答者が知らなかったとしても、回答者が発問者の意に沿った回答をできてしまう。)からです。
従って、そのような構造のない「Yes/No Question」は誘導尋問にはあたらないと考えるのが一般的です。「Yes/No Question」には、特定の回答へと回答者を導くこと以外に様々な機能があるのです。
例えば、
もしもし。こちらは佐藤というものですが。田中様のお宅でしょうか。
という場合には、発問者は、「田中」家のものとして設置された固定電話に架電しようとしているのだということを示すと共に、発問者の架電先が「田中」家のものとして設置された固定電話であるとの自己の認識が正しいか否かの確認を回答者に求めているということを示しています。この場合、発問者としては、発問者の架電先が「田中」家のものとして設置された固定電話であることを期待してはいるものの、「田中」家のものとして設置された固定電話ではない場合には、自分の意を酌んで「はい」と言ってもらうのではなく、「いいえ、違います」と答えてもらおうことを期待していますし、また、架電先が「田中」家のものとして設置された固定電話でない場合にも回答者が自分の意を酌んで「はい、そうです」と答えてくれることをそもそも期待していません。こういう質問は、発問者が示したその意向に沿って回答者が回答することが予定されていないのですから、回答は何ら発問者によって「誘導」されないのであって、一般に「誘導尋問」とはいいません。
なお、この場合、疑問詞を用いて、
もしもし。こちらは佐藤というものですが。どちらのお宅でしょうか。と質問した場合には、答えてもらえない可能性が高まります。
また、
Aという法案にあなたは賛成しますか。
という質問については、疑問詞を用いて「Aという法案についてどう思いますか。」と尋ねた場合に疑問詞に対応する要素となる「賛成する」あるいは「賛成しない」という評価方法があることを、回答者が知らない可能性はありません。従って、古典的な意味における「Yes/No Question」における誘導の事例とは異なるということになります。
「無条件で」という言葉にこだわっている人もいるようですが、「Yes/No Question」には、回答の範囲を絞るという機能があります。
今月号のゲームラボ、在庫ありますか。
という場合は、在庫の有無を確認する対象を「今月号のゲームラボ」に限定しているわけです。この場合、回答者としては、ないなら「ない」、あるなら「ある」との回答を得ることを期待しており、特定の回答を誘導してはいません。これを、疑問詞を用いて、
どのような雑誌が、在庫ありますか。
では、回答の範囲が広すぎてしまうのです。
そして、提案の内容を示した上で、その提案に対する賛否を求めるということはしばしば行われますが、その多くは、「無条件で」という言葉を敢えて付すかどうかはともかくとして、「特に修正したり条件を付したりすることなく、そのままの状態でその提案に賛成するのか否か」について回答を求めるものです。その意味で、回答の範囲を限定はしていますが、質問者は、加藤者がその提案に丸ごと賛成であれば「賛成」と、一部賛同できない点があるのであれば「反対」と回答することを期待しているので、「Yes/No Question」であってもやはり「誘導尋問」ではないということになります。
【追記】
世の中には、回答の範囲を限定することと、特定の回答へと誘導することとの差が理解できない人がいるみたいですね。ひょっとしたら、主尋問において何故に誘導尋問が原則禁止されるのか理解できていないかも知れません。
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