読売新聞が、10日付けの社説で、こんなことを書いている。
対策に伴う国債発行は10兆円を超え、今年度全体では40兆円を上回る見込みだ。国債増発で長期金利が上がれば、民間投資の減少や円高などの副作用を招く。日銀による国債の買い入れ増額など、政府・日銀の連携が重要だ。
www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090409-OYT1T01161.htm
以前も書いたように、国債の長期金利が4月に入って急激に上昇している。
これは、麻生政権が、国債増発の上に、赤字国債にまで手を出したからである。
もちろん、長期金利の上昇を放置すれば、民間投資などに悪影響を与えるクラウディングアウト効果が生じる。
そこで、読売新聞は、日銀による国債の買い増しを社説で要請したのである。
三橋氏は日銀による国債買い増しを『ソリューション』と評価しているが、それは『ソリューション』ではない。
しかし、日本銀行は世界で稀に見る(短期を含む)国債保有の中央銀行で、アメリカのFRBですらバランスシート上で国債は20%台で、欧州中央銀行も10%台で安定推移してきたのに対し、50%超が、国債なのである。
4月7日に公表された、最新の営業毎旬報告に基づくと3月31日現在で日銀は124兆円もの金融資産を保有し、内64兆円が国債である。
そう、日銀の保有する50%以上もの金融資産が『国債』なのである。
これは、世界的に見ても、不健康である。
ただ、以前は日銀総資産の60%が国債だったことから、たしかに、量は減ってきている。
しかし、その流れも、長期金利を下げるために、買い増しに動けば、止まる。
そもそも、日本の国債の8割以上は、中央銀行を含む銀行によって保有されている。
このため、以前から、我が国の国債価格はファンダメンタルズからかけ離れていると指摘されてきた。
そして、このファンダメンタルズからはなれることによって生じる『歪み』は、金利の低下を生む。
長期金利が下がると、財政規律を低下させ、簡単に、借り換えさせる。
現実に、昨年の財務省が発表した予算案概要によると、国債に大半が、借換されている事実に気づく。
我が国の政府は、もはや、国債なる借金を事実上、支払うことを、拒絶しているのである。
さらに、書くと、財政法第5条には、日銀の新規発行国債の保有を禁止している。
ところが、政府は、買いオペを通じて、堂々と、法律違反をしている。
まったく、遵法意識が無い点では、カルデロン一家顔負けである。
今後も、日銀が、市場に流動性を供給するために、国債を市場から買い取る、買いオペを実施することは目に見えている。
このように、今後、日銀の国債保有量が増えていくことは間違いない。
そんな中で、さらに、国債を引き受けろとは、酒に弱いサラリーマンを捕まえて、酒を飲め飲め勧めているようなものだ。
非道徳的だ。
そして何より、日銀の仕事である金融調節機能が損なわれれば、元も子もない。
すなわち、サラリーマンに酒を飲ませたのは良いが、翌日、二日酔いで仕事ができなくなる事態である。
もちろん、会社が儲かっている時なら、お咎め程度だが、世界中が金融危機のまっただ中で、明日、会社が潰れるかもしれないのに、二日酔いで働けないようでは、もはや話にならない。
これが、日銀による国債買い増しの欠点である。
最近は、この他にも、直接引受とか、政府紙幣保有などの暴論も出てきているが、論外である。
by AW
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