障害者団体向け割引制度を悪用した郵便不正事件で、障害者団体「凜(りん)の会」が04年2~4月、制度利用のためにNPO法人「障害者団体定期刊行物協会」(東京都)に加盟を申請したが、3度にわたり拒否されていたことが分かった。そのため、制度認可を受ける最後の手段として、厚生労働省の偽の証明書を入手し、制度認可を受けたとみられ、大阪地検特捜部は経緯を追及する。【林田七恵、久保聡】
関係者によると、凜の会関係者は違法ダイレクトメール(DM)を凜の会の刊行物を装って割引発送するため、04年2月ごろ、協会への加盟を申請した。
だが協会は、発送部数が数万~10万単位で、通常の障害者団体にしては異常に大量▽DMの広告掲載量が多い▽福祉団体としての活動の実態が不明確--などの理由で、加盟を拒否したという。しかし凜の会関係者が改めて加盟を依頼してきたため、協会は「営利目的の団体ではない」という念書を要求した。
そのため、同会幹部、河野克史(こうのただし)容疑者(68)が04年4月ごろ、証明書発行の部署となる厚労省障害保健福祉部係長、上村(かみむら)勉容疑者(39)に証明書発行に向けた偽の稟議(りんぎ)書の作成を依頼。偽の稟議書などを協会に提出し、再び加盟を申請したが、協会は厚労省の内部文書を凜の会側が所持していることを不審に思い、再び拒否したという。
その後、河野容疑者らが、民主党副代表の石井一参院議員の名前が記載された書類を持って協会を訪問し、加盟を求めたが断られたという。特捜部は、3度にわたり、協会加盟に失敗した河野容疑者が偽の証明書作成にも関与しているとみて追及する。
東京・霞が関の厚生労働省障害保健福祉部には27日午前9時半過ぎ、大阪地検が家宅捜索に入った。警備員がガードする中、段ボールを抱えた係官が足早に入室した。
出勤した職員らは「私には分かりません」「関係ありません」などと言いながら、報道陣を振り切るようにして、自分の部署に入っていった。【内橋寿明、佐藤浩】
毎日新聞 2009年5月27日 11時34分(最終更新 5月27日 15時03分)