北朝鮮は核開発を加速させるという。核兵器の威力を背景に米国と対等に渡り合って援助を引き出し、体制を維持したいようだ。国際社会は結束して、危険なかけを止めなくてはならない。
「いまや核放棄は絶対にあり得なくなった」「米国と追従勢力が封鎖を試みるなら、戦争行為とみなす」−。国連安保理の制裁決議に対し、北朝鮮外務省は声明を出して猛反発した。
今後抽出されるプルトニウムはすべて武器化するとともに、これまで存在を否定してきたウラン濃縮について「作業に着手する」と初めて公言した。
ウラン濃縮の施設は小規模で済み地下にも造れるため、衛星からとらえにくい。遠心分離機の部品など関連機材を細かく分けて貯蔵、運搬すれば、見つけるのは容易ではない。
北朝鮮と兵器取引があるといわれるイランは、ウラン濃縮を進めている。両者が手を結べば、東アジア、中東への核拡散の懸念は高まる。国際社会が広い監視網を築くことが急務である。
金正日総書記が脳卒中を患い、三男正雲氏を後継者とする作業を急いでいるからだといわれる。
正雲氏はまだ二十六歳。労働党や軍の経験も浅く、カリスマ性も足りない。そこで核実験や弾道ミサイル試射という「手柄」を息子に与えて、公式デビューをさせたいのではという観測だ。
核保有国として認知させ、「核削減を迫るなら、応分の補償をせよ」と周辺国からの支援を引き出す狙いもありそうだ。
この動きを止めるためには、各国は先の安保理決議に従って北朝鮮に対する武器禁輸、金融制裁を着実に実行し核とミサイルにつながる資材、資金の流れを断つ必要がある。
日本政府は独自の追加制裁を決めた。北朝鮮への輸出禁止対象を全品目に拡大する。かつて日本が直接、間接に輸出した製品や部品が大量破壊兵器に転用されたといわれる。日本は苦い経験を各国に伝えて、制裁の実効性を高めるよう促すべきだ。
北朝鮮には重ねて、六カ国協議など対話のテーブルに着くよう求めたい。米国や中国と対話する方法もあろう。軍拡、対決姿勢をやめないと、国際社会の包囲網は狭まるばかりだ。
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