評価が割れる中での幕引きである。政府の地方制度調査会が16日、国主導の市町村合併の終結を答申した。3200以上あった市町村を10年間で1775とほぼ半数に再編した「平成の大合併」運動も、来年3月でピリオドが打たれる。
自治体の苦しい財政事情に背中を押されなだれをうった合併劇だったが、分権の受け皿となる基礎自治体の基盤を強化するため、避けられない一里塚でもあった。今後はその功罪の検証を続けたうえで、さらなる合併の是非を検討する必要がある。特に、大都市圏にある自治体の合併と、小規模町村の将来像について、議論を深めなければならない。
日本の市町村数は減少を続けており、「明治の大合併」で7万超が約1万5000に、「昭和の大合併」でさらに約3500にまで再編された。今回は与党が目標と掲げた「1000自治体」にこそ至らなかったが実際は総務省の想定以上のペースで合併が進み、今や「村」の無い県も少なくない。高齢化の進展に加え、地方交付税の削減など財政悪化のあおりで町村の多くがコスト削減による生き残りを迫られた、ということだろう。
合併自治体のハコ物建設を優遇する特例債などを駆使した手法は自主合併としてギリギリの線であり、これ以上のテコ入れは強制合併に連動する可能性があった。その意味で、区切りをつけることは自然だ。合併に伴い地方議員の削減など行革が進んだ半面、旧市町村には市の中心から遠くなり、住民が不満を強めている地域が少なくない。合併の功罪を定期的に点検すると同時に、国、都道府県から基礎自治体(市町村)に権限、財源をより移譲することで、分権の受け皿にふさわしい内実を備えさせることが肝要だ。
同時に、今後も基礎自治体像をめぐる議論を続ける必要がある。
今回、合併を静観していた大都市圏は今後、高齢者の激増に直面し、独力での福祉施策が危ぶまれる自治体が少なくない。近隣市との合併が有効な選択肢か、検討を急ぐ必要がある。一方で、人口1万人未満の市町村もなお、500近く残る。総務省は近隣自治体同士が圏域を作り協力する「定住自立圏構想」を推進しているが、それでもカバーしきれない町村は多い。答申では、都道府県が小規模町村の一部の事務を代行する方策について言及した。検討に値するのではないか。
自治体再編に関しては都道府県を再編する道州制構想など、大仕掛けに「国のかたち」を見直す動きもある。こうした問題と並行し、あるべき基礎自治体の姿を与野党も積極的に議論すべきである。
毎日新聞 2009年6月17日 東京朝刊