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【暮らし】

薬物・暴力・借金… “成人”非行 悩む親

2009年6月17日

 暴力、ギャンブル、犯罪など子どもが成人後も起こす「非行」に親は悩み続ける。未成年者の親を対象に悩み相談などの活動をするNPO法人「非行克服支援センター」(東京)が、こうした親たちも支える電話相談など、新たな試みを始める。 (飯田克志)

 「短大二年生のとき、初めての水商売のアルバイトで、わずか三時間で二万円を得た。その日を境に『お金がすべて』になり、顔つき、性格まで変わってしまった」

 キャバクラから「夜の世界」に入り、ホストクラブに収入をつぎ込み、現在は風俗店で働く娘(30)の六十代の父親にとって、子どもへの悩みは尽きない。

 「身近な人には相談できなかった。わらをもつかむ思いで家相も見てもらうとか、一、二年目は解決法を求めて駆け回った」。七年前、同センターと、その活動を通して知り合った親たちのグループ「『非行』と向き合う親たちの会」に出合った。わが子の非行に悩む親たちと語り合い、娘のことを受け止められるようになり、三年前から会話も復活した。

 ただ、「社会的な問題を起こすのではと、いつも不安。やっぱり普通の生活をしてほしい」。この思いは娘に告げずにいる。「良い悪いは別に、社会人になって三十歳にもなれば本人の生き方が固まっている」からだ。

 支えてくれた同会だが、子どもが未成年の親たちに、成人後も続く非行の長期化のつらさは話しづらい。同じ境遇の親たちと語り合える場がほしかった。

 二十代の息子が詐欺事件で逮捕された男性(60)は「子どもが悪ければ、家族みんなが悪いという風潮が社会にあって、誰にも話せず悩んでいる親はかなりいると思う」と話す。

 非行少年らの親たちのケアに取り組んできた同センターでも数年来、「ほかに相談できるところがなくて」と、成人した子どもの親や家族からの電話相談が途切れない。現在は全体の一割を占めるようになった。二〇〇七年度は約三百件のうち、三十件が子どもが二十歳以上の親からの相談。うち五件は三十歳を超えていた。

 相談内容は薬物、ギャンブルやアルコール、家庭内暴力、繰り返す借金など。ある二十代男性の母親は「家の金や金になりそうなものを無断で持ち出し、金の使途は言わない。ときどき体がフラフラしていて、薬物を使っているんじゃないか心配」と訴えた。なかには暴力団から抜けられず、トラブルを繰り返すケースも。

 同センターは、子どもへの対処に苦慮したり、子どもが犯罪の加害者になり、社会から孤立する家族をサポートすることにした。春野すみれ副理事長は「子が成人し親に法的責任がなくても、親は巻き込まれ、長期化するほど、絶望に支配されていく。親がまず元気なことが、子どもにとっても大切」と指摘する。

 十年間、娘と苦闘してきた前出の父親は呼び掛ける。「人間は弱いから一人では頑張りきれない。親として残りの人生をどう生きるか、語り合うことで支え合い、生きていこう」

 同センターは今月二十、二十一日、電話相談(無料)を実施する。弁護士や依存症の専門家、親たちの会のメンバーらが対応する。相談電話番号は03(5348)6996、7699(午前十一時〜午後五時)。

 

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