コンテンツ産業の拠点か、国営マンガ喫茶か--。文化庁がアニメ、マンガ、ゲームなどの総合拠点となる「国立メディア芸術総合センター」(仮称)の設立を決めたことを、民主党が批判、賛否両論が起きている。
文化庁によるとアニメ、マンガ、ゲームなど「ジャパン・クール」と評価される分野を網羅し、海外に発信力のある拠点を目指す。09年度補正予算に117億円を計上した。作品を多数収蔵することは現時点で想定しておらず、各分野の成果を一元化し交流を促す。清水明芸術文化課長は「コンテンツ産業として、日本の経済を後押しする役割があり、国策として進める意義がある」と説明する。
だが、設立の根拠となった有識者検討会の報告書では、東京都内に4~5階建て、「展示室」「上映ホール」と目新しさはなく、具体的な展示内容もまだ決まっていない。
このため、民主党の鳩山由紀夫代表は国会で再三批判を展開。27日の党首討論では「首相のアニメ好きは知っているが、マンガ喫茶の民業圧迫ではないか」などと詰め寄った。
検討会メンバーでゲームクリエーターの石原恒和さんは「答弁で麻生(太郎首相)さんは『愛のあるマンガ喫茶でいいじゃないか』ぐらい言ってほしかった」と話す。検討会では「日本発の芸術の歴史を作る」など、熱い議論が交わされた。石原さんは「『箱物』で終わらせたくない。せっかくの好機を生かしたい」と思いを述べた。【佐々木宏之】
2009年6月1日