2009年6月16日3時3分
実態のない自称・障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会)を郵便割引制度の適用団体と認めた偽の証明書発行をめぐり、厚生労働省局長(当時課長)の村木厚子容疑者(53)らが逮捕された事件で、民主党国会議員から同会への対応を頼まれたとする当時上司の元障害保健福祉部長(退職)が大阪地検特捜部の任意の聴取に、障害者自立支援法への流れをつくるため、議員の依頼に応じたという趣旨の証言をしていることがわかった。
特捜部は、証明書偽造の背景に、同法成立に向けて野党の協力を得たいという期待感が同省内で共有されていた疑いがあるとみて、容疑を否認する村木局長を調べている。
04年当時、厚労省の障害保健福祉部では、元部長や、部下の企画課長だった現在の雇用均等・児童家庭局の村木局長らが、福祉サービス利用者に原則1割の負担を求める障害者自立支援法の成立に向けての責任者として、与野党の国会議員や障害者団体との折衝を続けていたとされる。
元部長の証言によると、元部長は04年2月ごろ、面識のある民主党幹部の国会議員から「障害者団体の認可の件でよろしく頼む」と電話を受け、村木局長らに「議員絡みだからうまく対応してほしい」と伝えたとされる。
元部長は、有力議員の依頼に応じることで法案がスムーズに成立することに期待した、などと特捜部に説明しているとされるが、一方で「虚偽の証明書が発行されるとは思わなかった」とも話しているとされる。
特捜部の調べなどによると、村木局長は元部長から依頼を受けたあと、この国会議員の元私設秘書で凛の会元会長の倉沢邦夫容疑者(73)=虚偽有印公文書作成・同行使の共犯容疑で逮捕=と面会。部下だった企画課係長の上村勉容疑者(39)=同=には、「議員案件」であることから、正規の決裁手続きをしないままでも証明書発行を急ぐよう指示した疑いがある。
上村係長もその必要を認識したうえで04年6月、偽の証明書を作ったとされる。
この国会議員の事務所はこれまでの取材に「凛の会は知らない」と関与を全面否定している。障害者自立支援法は結局、05年10月、民主など野党が反対し、自民、公明の賛成多数で成立している。