「証明書を出した記憶はない。団体の固有名詞自体、記憶に残っていない」。村木厚子厚生労働省雇用均等・児童家庭局長は、大阪地検特捜部に逮捕される前、共同通信の取材に潔白を主張していた。
容疑は、再逮捕された厚労省係長らと共謀し、郵便料金を不正に免れるため障害者団体としての実体がない「凜(りん)の会」(現・白山会)の証明書を偽造するなどしたとされる。虚偽有印公文書作成・同行使の疑いだ。
特捜部は偽造証明書発行当時、村木容疑者は担当課長で、部下の係長に証明書発行を指示したとみる。捜査関係者によると、村木容疑者は容疑を全面否認するが、係長は「わたしが偽造した証明書を局長に渡した」と供述している。
村木容疑者は「女性キャリアのエース格」と評され、主に女性や障害者のための政策で期待されていた。それなのに、福祉を食い物にするような不正に手を貸したとすれば「なぜ」と疑問がわく。
「凜の会」の証明書は省内で「政治案件」として扱われていたとの供述もある。政治家が口利きなどでうごめいていたのだろうか。見過ごしにはできない。
検察に対し、民主党の小沢一郎前代表の公設秘書が起訴された西松建設の巨額献金事件で、国策捜査との批判がくすぶる。信頼を維持するには、全容解明以外にない。