「直線ルートで飯田駅を」 リニア説明会で市民ら
リニア中央新幹線構想で、飯田下伊那地域の期成同盟会関係者を対象にしたJR東海の説明会が15日に飯田市役所で開かれ、参加者からは飯田駅の設置や同社が想定する直線のCルートによる早期実現を求める意見が相次いだ。県はこれまで「県民の総意」として伊那谷迂回のBルートを要望してきたが、地域ごと考えに違いがあることが浮き彫りになった。同社は経路選定に関する言及を避け、「今後、3ルートの試算を示す」と答えるにとどめた。
同社が地域からの要請を受けて13日から沿線各地で開いており、飯田はBルートによる建設を求めた諏訪、伊那などに続く4会場目で最終。建設促進飯伊地区期成同盟会(会長=牧野光朗市長)を構成する市町村や商工団体などから約100人が出席した。
質疑では「官民、地域を挙げて飯田駅設置を求めている」、「経路はCルートを望んでいる」などの意見が続き、飯田商工会議所の萩本範文副会頭が「多くの飯伊住民の願いは直線ルートによる飯田駅の実現にある」と発言すると賛同の拍手が沸き起こった。
同副会頭はまた「国家的戦略と地方の問題は別。地方が利便を求めるのは当然だが、幹と枝葉の論議は分けるべき」と、県などが要求するBルートに否定的な考えを示し、柴田忠昭同職は「1日も早くCルートで一本化できる体制を整えてほしい」と要望の矛先を県に向けた。
発言者の大半が直線ルートの選定や飯田駅の設置に言及したが、JR東海はこれまでどおり「ルート選定のエッセンスとなる主要データを精査している。まとまりしだい3案の客観的なデータを示し、理解を深めていただくことが大切だと考えている」との回答を繰り返した。
質疑ではほかに、「Bルートの場合、飯田線、中央本線の並行在来線化問題が浮上しないか」「中間駅の地元負担はどの程度になるのか」などの質問もあった。
JR東海は「並行在来線の移管は法律で決められているわけではなく、正直わからない」、中間駅の建設費は「受益の観点から地元負担でと考えているが、費用については現段階では話せない」とした。
リニアの想定ルートは甲府市付近-名古屋市付近間で、南アを北側に迂回して木曽谷を南下するA、同迂回で伊那谷を南下するB、南アを貫くトンネルで直線的に結ぶCの3案があり、JR東海がC案による建設を想定しているのに対し、県はB案による整備を求めている。
村井仁知事は「B案は県民の総意」として主張の根拠にしてきたが、C案を求める飯伊の考えが明確化したことで「統一意思」が崩れた。
飯伊の声を受け、県や6月県会でBルートを求める決議を模索している県議会がどう対応するかが注目される。
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出席者の声
期成同盟会長の牧野光朗飯田市長は出張のため、説明会には出席しなかった。
翌日の会見で「この地域は1974年に他地域に先駆けて期成同盟会をつくり、積極的な運動をしてきた。その実績を踏まえるとともに、さらに積極的な運動を推進し、ルート問題に翻弄されることなく、ひたすら飯田駅設置に全力を尽くしたい。その立場に変わりない」と語った。
また、渡辺嘉蔵副市長も「今の時点ではルート問題に翻弄されるより、一番の目的の飯田駅の設置に向けて取り組みたい」とこれまでどおりの姿勢を強調した。
4会場すべてで説明した同社の関戸淳二東海道新幹線21世紀対策本部担当課長は、最終となった飯田会場の終了後「基礎となる部分について我々の考えをお示しし、理解していただけたと思う」と感想を語った。
ルート選定については「現在進めている精査が終わりしだい、まず県に3案の試算を示し、その後、地域の期成同盟会を対象にした(合同の)説明会を開きたい」とした。
飯田会場の印象を聞かれると「直線ルートと飯田駅の実現を求める声が大半だったと認識している」と答えた。
地域からの要請を受けて地域個別の説明会開催をJR東海に要請した県交通政策課の三村保課長は「3案の試算提示後に再度、地域単位の説明会開催を求める声が強い。JR側に強く要望していきたい」と語った。
県が総意とするBルートとは異なる飯伊の考えが明らかになったことについては「村井知事が主張しているのは、20年の間、B案による建設を求めてきた経過の重みだと思う」と話した。
県に対してCルートによる一本化を求めた飯田商工会議所の柴田忠昭副会頭は、県議会が模索しているB案決議について「県内で意見が分かれている以上、不可能ではないか。万が一にもAやBに決まったら、世界の笑いものになる」と厳しい口調で批判した。
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