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凶悪犯罪の手口を垂れ流すテレビ(上)

 ソウル市瑞草区方背洞に住む主婦(43)は最近、テレビドラマを見ていて、子供の目を隠し、抱き寄せることがよくある。子供たちが犠牲になるむごい犯罪の様子が平気で放送されているためだ。今年3月にはSBSテレビのドラマ『自鳴鼓』で、楽浪国の王妃が別の王妃の生後間もない娘の胸に鋭いかんざしを刺して殺害しようとする場面が放送された。MBCテレビの朝のドラマ『白いうそ』では、妻が夫の婚外子を誘拐し、録音した子供の声を実の母に聞かせ、「探せるものなら探してみろ」と告げる場面に驚かされた。

 最近のお茶の間ではうそ、暴力、犯罪の競演が繰り広げられている。これまでタブー視されてきた子供への凶悪犯罪も平気で電波に乗るようになった。単純な暴行、詐欺、脅迫、窃盗は犯罪に見えないほど、ありふれた日常として描写されている。

◆暴力やいじめを教える娯楽番組

 最近の娯楽番組は芸能人の暴力やいじめが散りばめられている。MBCテレビの『無限挑戦』では3月に互いの腹部を踏みつけ、ベルトを引っ張り、どれだけ耐えられるかを競うゲームを放送した。ケーブルテレビチャンネルのMBCエブリーワンで放送された『イ・ギョンギュの福不福ショー』では、司会者がコウモリやモモンガのふんを入れたという食べ物を出演者に出した。

 バラエティー番組が笑いを取る方法もいじめ一色だ。あいさつだと言って尻をけったり、ほおを殴ったりするのは基本(KBS第2テレビ『ギャグコンサート』)、洗濯ばさみで鼻と口をつまんだ上で引っ張る(SBSテレビ『笑いを求める人々』)、他人の皮膚をあかすりタオルでこすった後で液状の消炎剤を塗る(MBCテレビ『ギャグ夜』)など、さまざまないじめが毎週画面を埋め尽くしている。

 放送通信審議委員会は「地上波3局のバラエティー番組を見ると、弱者が一方的に暴行を受けるシーンが頻繁に登場する。たとえ設定だとしても、そうした内容は視聴者に他人の苦しみを楽しむように仕向け、暴力に対する不感症を招くことがあり得る」と指摘した。

◆うそが日常化したテレビ

 KBS第2テレビの『シン・ドンヨプ、シン・ボンソンのシャンパン』は出演者のうそでいつも論争を引き起こす。既にほかの番組で紹介されたストーリーをまるで自分や周囲の人物が経験したことかのように放送し、視聴者の非難を浴びている。

 今年2月に同番組に出演したタレントのキム・セアは「芸能人Kが一晩中家の前で待っていたので、怖くなって絶交した」と述べ、その人物が出演したというドラマの実名を挙げるなどした。しかし、該当する芸能人の激しい抗議を受け、スタッフと共に公開謝罪に追い込まれた。

 ある地上波テレビ局の芸能局関係者は、「うわさにすぎない話を無責任に取り上げる出演者がずいぶんいる。制作スタッフにも判断が難しい」と話す。

 『危険な動画SIGN』『スキャンダル2.0』『エクソシスト』のように、まるで本物のドキュメンタリーであるかのように制作された偽のドキュメンタリー番組も、視聴者にうそを教える主犯だ。

 韓国コンテンツ振興院のパク・ウンジン研究員は、「明らかなうそが放送を通じて日常的に流布され、誤った情報が事実として受け取られて、真実の価値に対する大衆の信頼まで揺らいでいる」と話した。

崔承賢(チェ・スンヒョン)記者

ソン・ヘジン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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