戦時中、中国東北部(旧満州)の経済発展に寄与した直方市(旧新入村)出身の商人、向野堅一(1868~1931)を広く知ってもらう講演会「つよくやさしい日本人」(直方郷土研究会主催)が23日、市中央公民館であった。講師は、向野研究に取り組む曽孫で茨城大教育学部准教授の向野康江さん(49)=芸術学=で、市民約50人が熱心に聴き入った。
堅一は日清貿易研究所(上海)で語学や商業学を学び、日清・日露戦争では旧日本軍の通訳やちょう報、食糧調達などに従事。戦後は満州で石炭・石油販売、不動産、銀行などを経営する一方、奉天商業会議所副会頭として財界の指導的役割も果たした。
康江さんは「軍の御用商人などと呼ばれたが、ちょう報活動で殺された仲間の遺体を清軍から取り戻したのも彼」と説明。「強く、優しい日本人として、満州で活躍した人物がこの直方から出たことを心にとどめてもらえれば」と述べた。【入江直樹】
〔筑豊版〕
毎日新聞 2009年5月24日 地方版