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【社会】

渋谷・宮下公園 “ナイキ公園”に 『市民活動に制約』反発も

2009年6月10日 夕刊

都心のビル街に緑が広がる宮下公園。左はJR山手線=10日午前、東京都渋谷区で、本社ヘリ「わかづる」から(市川和宏撮影)

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 東京都渋谷区が渋谷駅近くにある区立宮下公園の命名権をスポーツ用品メーカー「ナイキジャパン」(東京都品川区)に売却することが複数の関係者の話で分かった。契約にはナイキがスポーツ施設を区に寄贈することが盛り込まれる見通しだ。月内にも契約が締結され、今秋、改修工事が始まる。桑原敏武区長は十一日の区議会本会議で、民間企業と交渉が進んでいることを明かし都市環境委員会で具体的内容を説明する。公共の場が企業の営利活動拠点になることに利用者からは反対の声も上がっている。 (社会部・小川慎一)

 宮下公園は渋谷駅から徒歩五分ほどの好立地で、面積は一万平方メートルほど。JR山手線と明治通りに挟まれた繁華街では貴重な緑地だ。滑り台や砂場のほか、区営の有料フットサル場がある。

 関係者によると、ナイキは園内にスケートボード場のほか、ロッククライミングの体験施設を新設し、フットサル場も大幅改修する。整備費数億円はすべてナイキが負担する。渋谷区とナイキは命名権について十年契約で年間千五百万〜二千万円で最終調整している。公園の維持管理は従来通り区が行う。

 宮下公園が“ナイキ公園”となることに、市民団体「みんなの宮下公園をナイキ化計画から守る会」の黒岩大助さん(43)は「一企業がスポーツ施設を造って管理すれば、集会などの市民活動は大幅に縮小される。これまで何の説明もせずに利用者を無視し、区長がトップダウンで計画を進めるのはおかしい」と話す。公園で寝泊まりするホームレス二十人ほどと支援者も「生活の場を失う」と訴えている。

 守る会は十三日、宮下公園周辺で、改修反対を呼び掛けるデモを行う予定だ。

 ナイキPRチームは「渋谷区の正式発表までは、進ちょく状況について答えられない」とコメントした。

 <命名権(ネーミングライツ)> 米国スポーツ界で施設運営費の調達手段として広がり、日本では1990年代からスポーツ、文化施設の名称に広告効果を期待する企業が企業名を付けるビジネスとして確立した。渋谷区では2006年、渋谷公会堂(渋谷C.C.Lemonホール)の命名権をサントリーに売却。

 今年2月には区内14カ所の公衆トイレの命名権を募り、25件の応募があった。

 

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