新人レスラー死亡事故 送検へ
- 2009/06/16(火)
本日の東京新聞に掲載されたとおり、東京湾岸署は、業務上過失致死の疑いで、佐野直、菅原伊織、笠原寧の3名を今月中に書類送検する方針を固めた。
昨年10月、由利大輔さんが新木場ファーストリングでの合同練習中に「ダブルインパクト」を半ば強要され、首の骨を折って死亡した事故は、責任者である佐野、菅原が遺族に説明しようともしない酷いもので、さらにそれをプロレスメディアが黙殺する酷い状況だった。
事故直後、僕は当事者に連絡を試みたが、佐野には人を通じて「どうせ俺が悪者にされるから」と拒まれ、菅原は一切の応答をしてこなかった。プロレス記者を含むいくらかのメディアにもこの事故について伝えたが、その反応は冷たいものだった。現場にいた者で証言してくれたのは笠原一人だったが、その彼は菅原の代理人を名乗る関係者から脅迫行為を受ける始末だった。
結局、僕が自分の夕刊フジの連載コラムで書いたのが第一報となり、その後は産経新聞やテレビ朝日、実話ナックルズなどで大々的に伝えたが、10月に起きた事故で半年以上も送検に至らなかったのは、様々な理由がある。逃げ腰で嘘をついている人間がいたのも要因だったと思うが、ひとつは警察が当初、業務上過失致死ではなく、それより軽い過失致死で捜査を進めていたことだ。確かに解釈が難しい事故ではあると思うが、今は担当から外された担当刑事の態度が「熱心な対応ではなかった」と遺族が嘆いたいてのは事実。これは具体的な酷いやり取りを聞いているが、捜査に影響を与えないために明かしていない。十分に捜査がされていないような印象から心労が重なり、遺族のうち2人も入院者を出してしまい、それが「漢」のハンドルネームで知られるSさんが代理人で動かざるを得なくなった理由だ。
僕のところには聞いたこともなかったプロレス団体の代表を名乗る人間から「当事者の問題だから記事を書くな」という抗議や、当事者が所属する団体の関係者からも次元の低い内容の連絡があったり、会社役員であるSさんのもとにもカルト団体を名乗る妙な連中から延々と嫌がらせがある中、僕が司法に携わるボクシング関係者に頭を下げてヘルプしてもらう最終手段のような形で、業務上過失致死での刑事告訴を決めた。笠原はたった一度の個別聴取で「これで聴取は終わり」と告げられていて、前述ボクシング関係者の助けがなければ捜査はそのまま終了していたはずだ。
風向きが変わったのは明らかに刑事告訴提出以降だ。笠原が再度聴取を受けたのはもちろん、由利さんのデビューまでたった2度しかなかったリング練習や、試合に至るずさんな経緯の目撃者もここで初めて聴取を受けている。自分が不利になることも承知の上で、遺族に唯一、直接の謝罪・説明を行なった笠原の正直な証言も非常に大きなものだった。ある人物に「証言するなら職場に乗り込んでクビにしてやる」と脅されながらも毅然とした対応をとったのは、僕だけでなく渡辺宏志ら先輩レスラーの心も動かし、刑事告訴の材料となる僕ら独自調査の進展に役立った。
この死亡事故で何が要因となったか、誰が責任を負うべきかは司法の判断に委ねられるが、そのまま放置していれば十分な案件となっていなかった可能性の高いものを、ここまでの形にしたのは紛れもなく第3者の怒りの意思で、ファンや関係者はもちろん事故への対応に納得しない人間たちの力だった。僕は佐野と直接話をしたし、複数の人物が菅原と何度か直接連絡をしたが、その返答は責任のかけらも感じない酷いものだった。この2人はいま現在も遺族と向き合っていない。「なぜ遺族に謝罪・説明しないのか?」という問いに両者とも人を通じて「警察に全て話しているからきちんと対応している」と答えたのだが、それは刑事対応で当然の義務であり、死亡事故に関わった民事対応とは無関係だ。交通事故で相手を死なせた加害者が「警察に行ったから十分に対応した」と言うようなもので、自分の置かれた立場を全く理解していない。こんな常識も説明しなければ理解できないような人間が「俺はプロレスラーだ」と自称して、正当な大先輩選手たちと肩を並べた気分に浸っている状況を業界が黙認するのも我慢しがたいものがある。一部の関係者に至ってはそれを非難するどころか応援する側にまわっているのだ。
また、この件で遺族を傷つけるような物言いをし、笠原に嘘をついてまで強引な取材をしたTBS記者や、佐野の言い分を鵜呑みにし、笠原には名前も名乗らず編集部に呼びつける電話一本しただけで記事にした週刊プロレスの取材手法にも疑問を投げかけておく。記者という職業が時に無礼な存在になるのは重々承知しているが、自分の親族が亡くなって同じ事をされたらどう思うか・・・そんな質問をされなければ真剣に事故を受け止められないのなら、悲惨な事故を悲惨だと伝える役目を果たす能力はないと思う。この刑事告訴を動かしたのがそんな無能な一部メディアではなく、悲劇をまるで自分のことのように感じた者たちなのだから。(片岡亮)
「新人プロレスラー 由利大輔さん 悲劇の事故死を追求する会」
http://m-7095a792cf65f500-m.cocolog-nifty.com/blog/cat35564883/index.html
→ 今は裁判前で喉元で止めていることが多いです。事態が進む中でまた時が来たら「知られざる真実」を追記していきます。これまで事故の真実追及に協力してくれた方々、漢ことSさんを応援してくれた多くの方々に改めて御礼申し上げます。三沢さんが亡くなって真のプロレス継承者を失った損失と同じく、プロレスを冒涜するような状況で人が亡くなったことも同じ業界の悲しみだと僕は思ってます。本来なら僕ではなくプロレス村に住む記者がこの件に立ち上がってほしかったです。
- 拳論
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