社説

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社説:自民党 選挙前この有り様では

 衆院選を間近にしての窮状である。毎日新聞の世論調査で、麻生内閣の支持率は前回より5ポイント減の19%となり、再び1割台に落ち込んだ。14日投票の千葉市長選では民主党推薦の31歳の新人が自民、公明推薦の前副市長に圧勝、与党は地方組織の支持も含めると、名古屋、さいたまに続き政令市長選3連敗となった。

 西松建設事件による民主党の混乱後、内閣支持率は一時復調気味だっただけに、与党、とりわけ自民党に冷や水を浴びせる調査結果である。だが、そもそもこの状況に至ったのは麻生太郎首相による衆院解散の先送りの結果であり、いたずらに時間を稼いでも、袋小路にはまるだけではないか。一日も早く政権公約を国民に示すことが、自民党に課せられた危機対処の方策である。

 今回、支持率下降の一因になったとみられるのが、日本郵政の社長人事問題をめぐる鳩山邦夫総務相の更迭だ。首相判断を7割近くが「評価しない」と答えた。内閣不支持の理由に首相の指導力不足を挙げる人は39%にのぼり、前回より13ポイント増えた。更迭の結論のみならず、手をこまねいて事態を深刻化させた首相のリーダーシップへの批判だろう。

 千葉市長選は前市長が汚職で起訴された特殊状況での結果でもあり、若い候補に刷新を求める追い風が吹いた側面もある。ただ、与党や連合千葉の推薦も受け組織力で優位だった自公推薦候補の惨敗には、都市無党派層が変化を求めるうねりを感じさせる。さきの参院選で地方票が離反した自民党にとって、大都市圏でも厳しさを感じさせる政令市長選の連敗だ。

 調査では次の衆院選で民主党の方に勝ってほしいと答えた人は自民党の倍近くにのぼり、政党支持率も民主党支持が34%と過去最高を記録した。こんな状況では9月の衆院議員の任期満了近くまで選挙の先延ばしを求める声が自民党内に強まりかねない。しかし、その議論には何の展望もない。7月の東京都議選の動向も見据え、衆院選直前になお「麻生降ろし」を探る向きも党内にはあるようだ。この期に及んでの政権たらい回しなど、もちろん論外だ。

 次期衆院選は2度にわたる首相の政権投げ出しを受けて行われるだけに、自民党も政権担当能力の証明を迫られる。にもかかわらず、同党の政権公約はまだ示されておらず、世襲問題や消費税をめぐる議論も混迷気味だ。危機にひんした政党として、あまりに悠長ではないか。

 一方、民主党も政党支持率こそ堅調だが、鳩山由紀夫代表への期待度は伸びていない。党首討論などを通じより具体的な論点を示すことで、党首力を証さねばならない。

毎日新聞 2009年6月16日 東京朝刊

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