国連安全保障理事会が、2度目の核実験を強行した北朝鮮に対する貨物検査の強化や新たな金融制裁などを盛り込んだ追加制裁決議案を全会一致で採択した。国際社会がようやく北朝鮮への圧力強化に軸足を置く格好になったが、実効性ある制裁につなげられるかどうか、真価が問われるのはこれからだ。
先月25日に核実験を実施した北朝鮮への対応をめぐる安保理の議論は、2週間を超える異例の長さとなった。制裁案の修正協議に時間を要したためだが、北朝鮮寄りだった中国とロシアもそれぞれの思惑で基本的には同調した。核実験を危険視する国際社会のメッセージがまとまった意義は大きいといえよう。
北朝鮮への安保理決議は2006年の核実験を受けた決議1718以来だ。決議1718の実効性強化を目指し、モノと金の流れ阻止を狙った。制裁措置の柱は、北朝鮮船舶への貨物検査強化と武器禁輸の拡大、それに金融制裁だ。
貨物検査については、禁制品を積んでいるとみなす「合理的な理由」がある場合、各国に自国領内での実施を要請。公海上の船舶検査については、船籍国の同意を得た上での実施を求めた。ただ、日米が強く主張した「義務化」は中国の反対で見送られ、加盟国への「要請」にとどめられた。
武器禁輸も06年決議より対象範囲を拡大し、北朝鮮の輸出は全面禁止とした。大量破壊兵器に絡む物資の流れに加え、外貨獲得手段への規制にもつながろう。金融制裁では、大量破壊兵器の開発につながる金融サービスや人道目的以外の支援・融資の停止を各国に求めた。
問題はこうした追加制裁の実効性をどう担保するかだ。制裁の着実な履行には国際社会の一致した取り組みが欠かせまい。とりわけ北朝鮮と経済関係の深い中国や、ロシアの協力が重要な鍵を握るのは間違いない。
一方、北朝鮮は制裁決議を「断固糾弾する」と非難し、制裁実施には「軍事的に対応する」との外務省声明を発表した。プルトニウムの全量兵器化とウラン濃縮着手も表明、3回目の核実験などで強硬姿勢を打ち出す構えもみせる。朝鮮半島情勢のさらなる緊迫化が懸念される。
日本政府は制裁実施への具体的な対応や法整備の検討に着手するとともに、北朝鮮への輸出入の全面禁止を軸とする独自の制裁強化策を16日にも閣議決定する方針を固めた。国際社会と結束を強め、北朝鮮の挑発行為を封じ込めねばならない。
仕事を続けながら出産、子育てをしたいと願う人にとって朗報といえそうだ。短時間勤務制度の導入を柱にした育児・介護休業法改正案が今国会で成立する見通しになった。
改正案は「仕事と子育ての両立」を目的にしている。3歳未満の子どもを持つ従業員を対象に、1日6時間程度の短時間勤務や従業員が希望すれば残業を免除する制度導入を企業に義務付けるのがポイントだ。
政府が提出していたが、衆院厚生労働委員会で育児休業の取得を理由に不当解雇される「育休切り」防止に向け、違反企業名の公表実施時期の前倒しなどの修正で与野党が合意し、全会一致で可決した。衆院本会議や参院でも可決される見込みだ。
現行法では、基本的に子どもが1歳になるまで育児休業を取得できるようになっている。しかし、問題はその後である。職場に復帰した途端、通常の勤務や残業が育児の大きな障害となり、やむを得ず退職する女性は少なくないという。
子育てをしながら働き続けるには保育所などハード面の充実とともに、時間的余裕も大切だ。景気悪化で「育休切り」も社会問題化しており、防止策の強化は欠かせないだろう。
少子化が課題となる中、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数)は2005年から3年連続で上昇している。今回の改正案が成立すれば、この流れを定着させていく好材料となろう。
ただ、いくら制度が拡充されても、使いにくければ意味がない。勤務時間短縮や残業免除では、代替要員の確保などで企業の負担増が予想される。国の支援策が必要だろう。職場では利用しやすい環境づくりに向けて、経営者や管理職らの意識改革が強く求められる。
(2009年6月14日掲載)