伊那市は松くい虫被害対策で今年度、ヒノキなど松以外の樹種に転換し、感染源を除去するエリアを従来の東春近・西春近地区全域に加え、富県と美篶地区の一部にも拡大する。被害木の新たな駆除方法として、小さな木片に破砕し、原因となるマツノマダラカミキリが媒介するマツノザイセンチュウを殺虫処理する方法も検討する。5日、市浄水管理センターで開いた市松くい虫対策協議会(会長・小坂樫男市長)で方針を決めた。
市は、被害の発生が想定される標高800メートル以下の松林を2種類に区分。松林として維持していく保全松林は237ヘクタール、樹種転換を行う被害拡大防止松林は東春近、西春近両地区の376ヘクタールを位置付けている。
しかし、被害の拡大が進んでいることから、富県と美篶地区の一部も被害拡大防止林に取り込むよう地元や県と調整し、事業を実施していく。
樹種転換事業は昨年度から始め、東春近で8.2ヘクタール、西春近で1ヘクタール実施した。今年度は、富県、美篶地区も含め約20ヘクタールの樹種転換を予定している。
被害木は伐採後、時間が経つと分解する特殊なビニールで覆い、くん蒸処理しているが、被害木が残ってしまうため「見苦しい」との意見もある。そこで、伐採後、破砕機で一片が15ミリ以下のチップにする処理方法の導入も検討していく。
被害を未然に防ぐため、樹幹への薬剤注入に対する補助制度も引き続き行っていく。
同市では2008年2月に東春近地区で松くい虫の被害が確認され、年々拡大している。昨年度の被害量は1222立方メートルで、前年度比155立方メートル増加した。被害木の伐倒くん蒸処理は昨年度は739本、768立方メートル。被害は拡大しているが、樹種転換が進んでいるため前年度比で325本、269立方メートル減少した。被害が出ていないのは西箕輪、長谷の2地区のみ。