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三沢光晴さん追悼…天国に届け10カウント

 三沢光晴さんの遺影を手に10カウントゴングで冥福を祈る左から小川良成、小橋建太、百田光雄、田上明=博多スターレーン
 三沢光晴さんの遺影を手に10カウントゴングで冥福を祈る左から小川良成、小橋建太、百田光雄、田上明=博多スターレーン

 プロレス団体ノアの選手兼社長、三沢光晴さん(享年46)が13日の広島市内での試合中、相手の技を受けて頭を強打し、急死してから一夜明けた14日、一時は開催が危ぶまれた福岡・博多スターレーン大会が悲しみの中、行われた。開始前にリング上で10カウントが響き、涙に暮れる選手も。満員のファンから「三沢コール」の大合唱が沸き起こる中、急きょ設けられた献花台に多数の花束が手向けられた。広島県警によると、三沢さんの死因は頸髄離断(けいずいりだん)と判明。遺族の意向で葬儀は密葬で行われ、ファンのために後日、お別れの会が開かれる。

  ◇  ◇

 悲しみの中、ノアの方舟は舵(かじ)を取り続けた。100人のファンが列をなし、普段の倍以上の当日券が売れた博多大会。会場は2600人の超満員に膨れ上がった。第1試合開始前、全選手が囲んだリング上。追悼の10カウントが鳴り響き、百田光雄副社長があいさつを終えると、万雷の拍手が1分間続いた。

 すると、三沢さんの入場テーマ曲「スパルタンX」が響いた。地鳴りのような「三沢コール」が沸き起こる。選手会長の森嶋猛、丸藤正道、鈴木鼓太郎…。三沢さんを心から慕っていた選手たちが大粒の涙を流しながら、リングを後にした。

 第2試合では、三沢さんの最後の対戦相手となった齋藤彰俊が登場。岩石落としが事故の発端となったが、ファンは大きな拍手と声援を送った。齋藤は涙をふきながら自らほおを張り、キック攻撃を相手に見舞って奮闘した。ファンが支えた瞬間だった。

 試合には敗れたものの、齋藤はリング上で遺影を指さすと、「社長、すみません!」と土下座した。「お前は悪くない」と背中を押された男は、退場後に泣き崩れた。「あの声援は三沢光晴に向けたものです。まだまだやりたいことがあったはずなのに…。『責任を取れ』という声援です」。自らを責め、引退も頭をよぎったというが「社長は弱音を吐くと怒る。大きな十字架を背負って前進していきたい。ノアで戦い続ける」と心に誓った。

 事故を受け、シリーズ中止の声も上がった。百田副社長は「社長はどんなことがあっても全力で試合を最優先させてきた。選手、スタッフが同じ意志で試合をすることが社長の遺志と思う」と予定通り、大会を開催した理由を説明した。

 選手たちには13日の深夜に悲報が伝えられた。この日の午前、広島大学病院で、帰京する遺体を涙ながらに見送った。直後にバスで博多に移動。極限の精神状態で臨んでいた。

 22日の後楽園大会までツアーは続く。三沢さんの密葬に、全選手が参列するのは難しい状況だが、若手のエース・KENTAは「ノアをもっと良いものにすれば、みんな喜ぶ」と語り、新GHCヘビー級王者の潮崎豪は「社長のつくったGHCをなくしちゃいけない」と、ノアの発展を約束した。

 三沢さんがいなくなっても、ノアの灯は消えない。激しく強く、これからも戦い続ける。

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