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2009年6月15日 (月)

『東のエデン』第10話の参考書?

次の第11話がTVシリーズとしての最終回である『東のエデン』(神山健治監督)ですが、第10話にして話は急転直下。ミサイル発射の真相やその動機、事件の向かう先などが一挙に噴出しました。その中で明らかに『パトレイバー2(P2)』を思わせるセリフなどもある中で、出た感想も『P2』のとき初めて「アニメが長足の進化をとげた」と思ったことと似てました。
基本的に商業アニメはエンターテインメントですが、制作が集団作業であることと、莫大な費用と時間がかかることから「現在」というスポットを描きにくいものなんです。もう少し長めの数年というスパンの「気分」みたいなことは描けるんですが。
だからそういう役割はむしろ個人作業である小説が担っていて、ある時期まではたとえばSFのバリエーションとしてのPF(ポリティカル・フィクション)がジャンルとして成立したのも、そのためです。ところが『P2』はアニメ映画でありながら、自衛隊海外派遣の問題などに食い込みつつ、現実を投影してみせた。レイアウト主導映画である以前に、アニメが小説を上回る機能を発揮したことがすごいなと思ってたんですよね。それは主張そのものの是非とは次元の違う問題です。
で、『東のエデン』の話ですが。「既得権益批判」みたいなものが出たとき、最近読んだ新書を思い出して「あっ」と思ったんですね。

サブカル・ニッポンの新自由主義
―既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書)

おそらくこの本を参考にしているんじゃないかな。新書の内容のとおり、まさに「既得権益批判」に追い込まれた若者が描かれてたわけで。ちょっとぎょっとしました。
これはまさに「現代の空気」を取り入れたアニメというわけで、TV放送というメディアの特性もあいまって、『P2』よりも明らかに進化してます。神山健治監督と言えば、『攻殻機動隊S.A.C.』でも過去の実在の事件を分解・再構築して取り入れていましたが、ついに「リアルタイム」で「アクチュアル」な問題を入れ始めたんだという感慨もありました。
というあたりで、いったいこの物語がどこへ向かうのか。現実との地続き感のあるアニメの行く先が楽しみです。

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