このところ、ちょっと雑用が多く、ブログ更新が滞りました。で、国連安保理の対北朝鮮制裁決議についてでも何か書こうかと思っていたら、昨日、鳩山邦夫総務相の辞任というニュースが飛び込んできたので、それに関連するエントリにします。といっても、弊紙は本日の紙面の1、2、3、5、26、27面で大展開しているので、ちょっと角度を変えてこの問題に関する政治家たちの発言を紙面より少し詳しめにお伝えすることとします。
まずは、麻生首相に辞表を提出した後、首相官邸で記者団のぶらさがりに応じた鳩山氏本人のものからです。そもそも自分の行為についてやたらと「正義」を強調し、他者のクビをとろうとすることに胡散臭さを感じ得ざるをえなかったのですが、今度はさらに自分の心境を西郷隆盛になぞらえるという思い上がりを見せつけてくれました。
今回の件とは直接関係ありませんが、私の好きなニーチェの言葉に《或る者たちは、みずからの一握りの正義を誇り、この正義のために、一切の諸事物に対して罪を犯す》《復讐そのものが『罰』と自称する。それは一つの虚偽の言葉でもって良心の満足を装うのだ》(ともに「このようにツァラトゥストゥラは語った」より)を連想しました。鳩山氏の腹のうちにはたくさんのルサンチマンが詰まっているのだろうなと…。
鳩山氏以下は、特に私のコメントをつけずに政治家たちの言葉を並べておきます。それで十分、どういうスタンスか何を考えているのか分かるのではないかと思います。しかしまあ、あの郵政選挙から4年近くたっても、与野党ともにこれだけ焦点にも大問題にもなるのですから、郵政民営化のインパクトは当時の私が考えていたよりはるかに大きかったようです。私はこの問題について、それほど意識がなかったことを改めて告白しておきます。
■12日午後、鳩山邦夫前総務相
今の政治は正しいことを言っても認められないことがあると。まあ、例は悪いけども、例はちょっと全然、不適切ですけども、西郷隆盛翁が、あれは征韓論の時ですけども、ずっと揉め続けて、最後に「岩倉公、過てり」って叫ぶんでしょ。で、まあ、政府を離れますよね。あの時、西郷隆盛翁も信念の人だから、自分が正しいと思ったことが通用しなかったんで、潔く政府を去った訳で、私もそう言った意味では政府、内閣を去ることは躊躇しませんでした。潔さが大事だから、こういうのは。正しいことが通用しないと思ったら、潔く去るのがいいんじゃないでしょうか。私は、正しいことを、自分が正しい人間だとは思わない。自分だって、いっぱい失敗してきた人間ですが、よごれたことをやる人間は許せない。それを許したのでは、政治にはならないというのが私の信念だから、私はそれを少なくとも、祖父・鳩山一郎から、正義と友愛は十分に仕込まれたと思っていますから、潔く去ります。自民党政権には見切りはつけておりませんが、まぁ、「政府に尋問の筋これあり」って、西郷隆盛さんの有名な言葉があるけど、そういう心境ではありますね。
おそらく、私が推測するのは、鳩山大臣が言っておられるような西川社長を責任をとってやめてもらうというに値するだけの法的根拠とか、裏づけとか、大臣の権限とかそういうものが必ずしも十分ではないのではないか、というのがポイントだったと思いますけれど、それは今後、内閣官房長官とか総理大臣の見解がでてくると思いますのでね。われわれは大変残念なのは、党として内閣が閣僚が一致して、行動する、判断するということが損なわれたと。そして閣僚辞任につながったことは残念です。民営化をするからには、一定の委員会や取締役会やそういうものの判断に人事その他を委ねるということが原則ですからね。それに介入していって、「あなたおやめなさい」「どうしなさい」というのは、むしろ民営化の趣旨に反するわけですから。これは、逆にいえば民営化の精神に反するかもしれないですからね。ただ、もっと悪い発想は公社に戻すと言っている、しかもいろいろ、労働組合もはじめ、実質公社に戻すといっている、それを選挙公約にかかげている野党ですよ。じゃあ、四年前の選挙で、どうしてあれほどの多数の人が認めたのか、と。郵政の民営化についてね。まさに、政府与党は民営化の路線をばく進するということで一致しているのですから、それは理解してほしいですね。
そのようなこと(離党)はすべきではないと思うが、もしそういう動きがあるのなら明らかに郵政民営化反対という趣旨であられるだろうから、そういう動きが本当に起きてくるのかどうか注視していきたいと思う。民主党の諸君にもあえて言わせていただくと、脱官僚というからには郵政の資産をまた全て役人に戻すようなことに、郵政民営化見直しみたいな主張はやめるべきだと思う。かんぽの問題だって、あのような毎年、数十億円も赤字を垂れ流す、しかも資産価値からいって沢山の雇用を抱えて、あんな巨額な2000数百億のお金をかけて作ったのが間違いなんであって、今起きている問題は郵政時代、公社時代のことがほとんどでしょ? そういうことを起こした総務省がね、官僚たちの責任を与野党挙げて究明していくべきであって、それを西川さん1人にどうのこうのというのは趣旨が違うと思いますね。あれだけ段ボール箱を沢山出してきて、調べた結果、何か怪しいというだけで、不正行為があったという結論はなかったわけでしょ? 私はやっぱり鳩山さんのご主張の方が明らかに誤っていたと思うし、そういう郵政民営化貫徹という国民の信の上にある麻生内閣として、こういう結論に至ったということは正しい判断だったと思います。
決断が遅いのと、決断、段取りの順番みたいなのが、練り方が足りないんじゃないかという気がする。一番よかったのは、十分鳩山さんがやるべきことをやって鳩山さんが混乱の責任をとって辞めるっていう順番の方が正しかったと、総理大臣にとって一番傷の少ない道だと思うけど、もし、これで西川問題が再燃したら、ぼくはすると思う。世論の動向から見て。全てが麻生さんの西川続投判断が正しかったか、鳩山問題の処理も順番大丈夫だったのかと言う感じになる気がする。今日で終わらないんじゃないか。
鳩山兄弟党みたいな形になると、あんまり正直言ってきれいじゃない。とってもとっても世襲的に見える。とってもとってもファミリー的に見える。民主主義のためによくないと思う。鳩山大臣、鳩山邦夫大臣はそれをおやりにならない方がいいと思いますけど。2羽の鳩のたとえはおもしろいけど、現実的に兄弟鳩政党になったら、なんだか名門がゆえに公私混同してるんじゃないのというイメージが広がって行くと思いますよ。よくありません。
この国では正しいことはなかなか通らない国なんだなと改めて感じだ。時代劇の一場面をみているようで、家老がね、うちの御用商人が悪いことして懐を肥やしていますよと殿様にいったが、お前が腹を切れと言われたようなものですね。こんな馬鹿なことがあっていいんですか!本当に情けないと思いますね。まさに麻生政権も、結局は小泉政権の傀儡だったということも明らかになった。(鳩山氏と国民新党の連携は)まあそれは鳩山さんのお考え次第ですからね。私達はもう、今の自民党は頼むに足らずということで飛び出して国民新党という党を作っているわけですから。私達は正しいことは正しい、間違っていることは間違っているといつもいってきたので。非常にスタンスとしては似通っていると思いますから、一緒にやりたいといえば綿貫民輔党首が判断されると思いますけど。
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郵政をめぐる混乱は、もともとが小泉政権下で行われたいわゆる小泉・竹中改革なるものに、麻生政権がその路線を踏襲するのか、その路線から脱却する、つまり変えるのかという根本のところの腰が定まっていないところに混乱が招いている大きな原因がある。麻生さん本人が、私も郵政民営化に本当は賛成じゃなかったと言ったことも含めてこういう混乱に陥っていると考えている。総務大臣が辞任する、しないということでものごとが決着することでなく、小泉・竹中路線そのものを踏襲する線で行くのか、こんかいはあくまでトカゲかどうか知らないが、自分たちの思惑と違う大臣を切ることでことを収めようとするのか。4年前の郵政選挙は結局のところ、小泉流のまさに大ペテンの選挙であった。結局は刺客騒動という見せ物を国民の前に見せて、政策的判断ではなくて、まさに劇場的な判断の中であの結果が出されたと思っている。今度の総選挙では本当にしっかりとそうしたある意味で劇場型選挙の反省に立った中で、それぞれの党のマニフェスト、それぞれの党が、特に我が党が政権交代した場合にどういう政権をつくろうとしているかも示すので、国民にしっかりとした判断をいだだきたい。まさに今回の総務大臣の辞任というは、竹中・小泉政治、さらに言えば4年前の郵政選挙がまさにある意味にまぼろしだったことを自ら自民党が証明したようなものだと考えている。
■12日夕、河村建夫官房長官
これは、特殊会社である、日本政府が100%株主の会社の人事に端を発したことであり、内閣としては総理としては盟友ともいうべき鳩山大臣と意見の一致を見なかったということは非常に悲しいことであり、残念なことであると表明されております。しかし一方で、郵政の民営化に対してこれをやり抜かなきゃならん立場でもありますから、新大臣の下できちんとした責任を果たすこと、これがより大事なことであると、このように考えております。これは、任命権者である総理のご判断でありまして、1民間会社といえども政府100%の会社であり、また郵政民営化という大きな課題を抱え、ユニバーサルサービスがきちんと行われなければいかんというのが大きな関心事であります。これは国民の大きな関心事であります。政府はこれに応えていく責任がございますので、そうした総合的な判断に総理が立っての決断であると、このように思います。
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郵政事業っていうのは国民の財産だと思っています。その郵政事業に関して政府と郵政会社との間に混乱を生じたような印象を与えたということは、はなはだ遺憾なことなんであって、この状況は早急に解決されてしかるべき。基本的にそう思って判断させてもらいました。西川さんの件については、今、仮にも郵政会社というのは民間会社、株主が特殊とはいえ、その株主が人事権を使うっていうのは、基本的には民間の事業に対して、国が直接いろいろなこと介入したりするというのは、努めて避けるべきだと、私は基本的にそう思っています。従って、今、いろいろな業務についての質問、業務改善に関する話が、総務省の方から会社の方に出ているはずですが、その業務の改善等々、いろいろありますけども、そういった問題を法律と事実に基づいて、新しい大臣のもとに、その問題をどう解決していっていかれるかと、その判断をきちんと聞いた上で判断をさせて頂きます。
西川さんに続けてやってもらう結論を出したのは正しいと思っている。なぜかというと、総理ご自身が言っておられるように、形式的な問題としては、政府は株主だがなんとか委員会で留任を決めた、取締役会でも決めた。つまり西川さんが日本郵政社長として、どういう考えでどういうことをやってきたかをよく知った人が決めたことであり、それは正しいと思う。かんぽの宿の問題はあります。悪いことをしたかどうかが定かじゃない。かんぽの宿というのは年間70億円くらい赤字を出している。垂れ流しだ。早く処分しろと。もう一つは一括売却しないと働く人たちの雇用が確保できないという原則にのっとって、やっている。それよりも大事なのは、日本郵政という会社は下に4つの会社があり、全部大会社だ。合計すると従業員だけで20何万人。実質的に発足して2年だが、とてもじゃないが民間会社として運営できる組織体になっていない。そういう意味では、これからむしろ西川さんに課題が残っているということ。
問題は、これが政治的問題になっちゃって、そのことに関心がうつってしまうところまで引きずってしまった。これは失敗ですね。これはおそらく、盟友なんで、総理も逡巡されたということなんだろうけど、結果としては長くなってしまったことが大きな失敗だろうと思う。私が、ずっと売却への段取りを聞いてみますと、確かに問題はいくつかある。ありますが、全体的に考えると、そんなにあの人が、今度、譲渡すると決めた人と談合して決めたということはなかったんじゃなかろうか。
(弟は)総務大臣が辞めるにあたって、西郷隆盛の言葉を使いましたね。『政府に尋問の筋これあり』。これは、西南戦争に決起する、すなわち政府に反旗を翻したときの言葉ですね。それだけの覚悟を鳩山総務大臣が持っているかどうかということ、これから覚悟が問われることになると思います。それからやはり、麻生総理のリーダーシップの欠如、甚だしいにも程があると。そう思います。なぜそう言うかというと、総理はぶら下がりで「国が介入するもんじゃない」と言われたと。会社法を全然わかっておられないじゃないかと思う。すなわち会社法では、日本郵政株は100%国が持ってる。国が株主。すなわち、取締役を決めるのは国なんですよね。それが国が介入しない方がいいって、どういうことか。最初からこの問題まったくおわかりになってなかったんだなと、いうことが最後になってよく分かった。(弟との連携は)本人がしかし、会見やぶらさがりで「連携はないでしょうね」と言っていたと聞く。私どもも、政権交代目指しているので、そのことを念頭に置いてはいない。ただ、弟の言葉はですね、政府に対して反旗を翻したときの西郷隆盛の言葉を引用したわけですから。弟としてはその覚悟を持っているんだなと、当然そう理解される。
子供のけんかじゃあるまいし、総理と総務大臣という日本の政治のリーダーたちがこれだけ無様な姿をさらしたことに非常に危機感を覚える。本来、当事者同士が話をして対応すれば罷免騒ぎにならなかったし、無駄なエネルギーをつかわずに済んだ。麻生首相のリーダーシップのなさを改めて示されたと思う。今回の政府与党の混乱は恐らく郵政民営化に対する考え方の違いをある程度、反映したものではないかというふうにも思う。結局、議論が尽くされないまま郵政民営化、しかも小泉民営化ですね。小泉民営化、賛成か反対かだけで選挙した様々な弊害が今、出てきていると思う。もう少し丁寧な議論をすべきだったと改めて感じている。
…ともあれ、鳩山家にはもういい加減にしてほしいというのが、偽らざる感想です。兄弟そろって、自分が何を言っているのかよく理解して言っているのかが分からないし、結局、ともに自分に酔っているだけに見えて仕方がないのですが…。
by 阿比留瑠比
「正義の人」を自称する鳩山氏…