きょうの社説 2009年6月14日

◎能登有料道の割引 宿泊者だけにこだわらず
 石川県が、来月から能登有料道路の割引をさらに手厚くする方針を打ち出した。能登地 区の協賛宿泊施設に泊まれば、同道路の全線通行料(片道)に当たる1180円分の通行券がもらえる仕組みである。政府の経済対策の目玉の一つである高速道路の「1000円走り放題」の効果で、盛り上がりをみせているマイカー旅行を能登にも積極的に呼び込み、不況の影響を受けている観光産業などを支えたいという県の狙いは理解できる。

 ただ、割引の対象をこれまでと同様に宿泊者に限っている点については、いささかもの 足りなさを感じる。能登の観光振興を考える上では、県内や隣県から来る日帰り客、金沢に宿泊して各地へ足を伸ばすツアー客らの取り込みも課題の一つだろう。そうした観光客でも、飲食や土産品購入、観光施設の利用などによる経済効果は十分に見込めるからである。夏秋の行楽シーズンに向け、宿泊者ばかりにこだわらず、宿泊を伴わない観光客にももっと目配りする必要があるのではないか。

 白山スーパー林道では、能登有料道路と同じような宿泊者向け割引に上乗せして、7〜 8月に県林業公社が独自の割引を実施する予定である。これなら、日帰り客らも白山ろくに引き寄せる効果が期待できよう。能登有料道路でもやってほしい取り組みだ。

 今年の大型連休期間中、中日本高速道路金沢支社管内の高速道路の平均断面交通量は前 年同期比25%増となり、北陸自動車道金沢東−金沢森本インターチェンジ間についても21%増えた。「1000円走り放題」の効果は絶大だったと言えよう。これに対して、能登有料道路は5・6%の増加にとどまっており、「根元」の北陸道などにに比べると、見劣りする感は否めない。

 連休中は、能登の祭りや観光施設などもそれなりににぎわってはいたものの、この数字 を見る限りでは、まだ「取りこぼし」があったようにも思える。「1000円走り放題」の恩恵を直接享受できる高速道路沿線の観光地との競争に負けないためには、相当に思い切った手だてがいるだろう。

◎北朝鮮制裁決議 安保理の威信かけ実行を
 北朝鮮に対する国連安全保障理事会の追加制裁決議が全会一致で採択された。決議に反 発する北朝鮮は、ウラン濃縮作業の着手やプルトニウムの全量兵器化など、さらなる挑発行為の構えを見せているが、国際社会は断固とした決意で制裁決議を実行に移す必要がある。

 とりわけ中国には「手抜き」をしないよう求めたい。食料・エネルギーの供給国として 北朝鮮の生命線を握る中国が本気で取り組まなければ、制裁決議の効き目は薄い。法的拘束力のある安保理の決議をないがしろにしては、安保理の威信と常任理事国としての自らの威厳を失墜させることになると認識してほしい。

 制裁決議の内容をめぐっては、安保理の基本的な対立構造と限界があらためて示される ことにもなった。日米が求めた船舶の貨物検査の「義務付け」が、中ロの反対で見送られ、「要請」に緩められたことが象徴的である。

 それでも、制裁決議の入り口で対立した2006年の核実験の時と違って中ロとも危機 感を深め、圧力を強める姿勢を明確にしている。制裁決議を採択しながら、実施で手心を加えては北朝鮮を増長させるだけのことは中ロとも思い知らされているはずだ。

 制裁決議の完全履行とともに重要なことは、決議後のシナリオである。オバマ米政権は 当初の対話姿勢を修正しているが、対北朝鮮政策の全体像は定かではない。北朝鮮の核廃棄をどう実現するか、これまで失敗続きだった戦略と戦術を、北朝鮮の権力移行も見据えて練り直す必要があろう。現在の六カ国協議の在り方、位置づけを考え直すことも課題である。

 日本にとって、北朝鮮の核に対する現実の抑止力は米国の「核の傘」しかない。米韓の 間では近く持たれる首脳会談の合意文書に明記される方向というが、米国の核の「拡大抑止」の実効性に疑念を持たれないようにする方法を考えてもらいたい。また、日本としては、安保理決議に基づく公海上での貨物検査を現行法で実施できないとなれば、新たな法制整備を急がなければなるまい。