【エルサレム前田英司】イスラエルのネタニヤフ首相は14日夜、外交演説を行い、中東和平交渉を巡り拒み続けてきた将来のパレスチナ国家樹立に初めて言及した。首相はただ、この国家が非武装化され、イスラエルを「ユダヤ人国家」と認めることが樹立合意の必要条件だと主張。さらに、パレスチナが求める聖都エルサレムの分割や、難民のイスラエル領内への帰還には応じないと言明するなど、事実上、パレスチナが受け入れられない高いハードルを突きつけた。
ネタニヤフ首相はパレスチナ国家について、「非武装化が保証され、パレスチナ人がイスラエルをユダヤ人国家と認めるなら、軍隊を持たないパレスチナ国家を隣国とする和平に合意できるだろう」と述べた。
また、パレスチナ自治政府に対し、無条件で即座に和平交渉を再開するよう呼びかけたが、パレスチナ難民問題を「イスラエル領の外で解決しなければならない」と門前払い。エルサレムについても「永久不可分のイスラエルの首都」と断定し、東エルサレムを将来の首都に描くパレスチナの要求をはねつけた。
ネタニヤフ首相はパレスチナ国家樹立で歩み寄りを示すことで、仲介を図ろうとしているオバマ米大統領との摩擦の緩和を図った形だ。ただ、首相は大統領が要求する占領地ヨルダン川西岸での入植活動の完全凍結を拒否し、人口増に伴う既存入植地の拡張は不可欠との従来方針を繰り返しており、火種はくすぶったままだ。
パレスチナ解放機構(PLO)のエラカト交渉局長は「(エルサレムの帰属問題など)最終地位交渉の課題の大半を退けられ、交渉の余地もない」と演説内容に憤った。
毎日新聞 2009年6月15日 11時55分