2007年度の「学際コース大賞」選考委員の選考の結果、以下のとおりになりましたのでお知らせいたします。受賞された方、おめでとうございました。
金賞から銅賞に該当する論文を「学際コース大賞受賞論文集」として公開しています。本コースでの教育・研究の成果の一端をお示しすることができるものと思います。
第2号(2007年度)は現在編集中です。いましばらくお待ちください。(2008.4.3)
2006年度の受賞結果についてはこちら
●お知らせ
一部ページの抜けがありましたので、修正しました。
(2007.4.1) |
「学際コース大賞 受賞論文集」 (ISSN
1881-946X) ・第1号 (2006年度) (PDFファイル・7.8Mb)
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【金賞】
杉田晃一(指導教員:伊藤守)
「おもしろさ」の再構築と創造―ニコニコ動画におけるコミュニケーション分析―
(選考理由)
従来のオーディエンス研究の流れを踏まえつつ、「ニコニコ動画」を切り口にして映像を見ることの意味とその「おもしろさ」を分析したものです。インターネットに関する研究は、このメディアの持つ多角的性格を反映し、さまざまな議論を産出していますが、本論文では製作者でありかつ消費者である、しかもまた消費者にとどまることなく批評者でもありうる「動画サイト」という空間の特性を浮かび上がらせることに成功し、現在のメディア環境の可能性とそこに成立するコミュニティの課題の析出に成功しています。
【銀賞】
堀口弘恵(指導教員:神尾達之)
大人の女性だけのユートピア世界―宝塚の男役の魅力とは?―
(選考理由)
宝塚歌劇について、複数の素材、方法、理論から分析することによりその魅力を明らかにしようとした力作です。とりわけ「《女性の幻想の中の男性像》の《体現者》として《共感》するまなざし」、「溌溂と輝く姿や女性としての美しさを《尊敬》するまなざし」、「儚い幻想世界の中の《偶像》として《擬似所有》するまなざし」という三つの眼差しの発見は極めて独創的なものです。
【銅賞】
齋藤巧(指導教員:野谷文昭)
ジミ・ヘンドリックスのハイブリッド性―アメリカ合衆国黒人音楽との関係、そしてその可能性について
(選考理由)
これまで黒人音楽史の流れからはみ出す天才異端児とされてきたカリスマ的ミュージシャン、ジミ・ヘンドリックスについて、その音楽性の分析に本格的に取り組み、あらためて黒人音楽史の中に適切に位置づけようとしたものです。それは合衆国黒人音楽の「本質」に関する通説に対する批判でもあり、黒人音楽の新たな読み解きの可能性を提示していています。
【奨励賞】
青木陽香(指導教員:原宏之) 広告における言葉の使用と再生産
(選考理由)
広告を対象としながらもコピーの分析に焦点が絞られ、また記号論による分析方法が終始ゆるぎなく一貫していることから、広告コピーの時代別(戦後日本)の分析から世相を浮き彫りにする力作になっています。1960年代から現代までの日本社会における「欲望」の変遷史としても読み応えがあります。
天野弘太郎(指導教員:原宏之) 笑いの戦略―漫才の「ボケ」と「ツッコミ」―
(選考理由)
先行研究を参照しつつ漫才の発生と歴史をおさえた上で、「ボケ」と「ツッコミ」の役割関係について、しっかりとしたカテゴリー分類を行っています。M1グランプリを中心とした膨大な量のコーパスを網羅的に分析しており、「誘発頻度」「参与時間」「言語的分類」をもとに各漫才コンビの特性を読み解いている点は非常に独創性の高いものです。
久保田健太郎(指導教員:高橋順一) 日本のヘリテージ―天皇からパトリへ―
(選考理由)
大日本帝国憲法によって担保された日本国家=社会の統治、統合構造を戦後の日本国憲法体制へ連続的に継承させる役割を担った象徴天皇制の本質的性格を読み取った上で、象徴天皇制のポテンシャルが尽きようとしている現状を分析し、新たに「パトリ」という概念を提示し、よりゆるやかな国家=社会統合モデルの提起を試みています。現代日本社会のアクチュアルな課題に切り込んだ力作です。
三宅沙知子(指導教員:後藤雄介)
黒い憂鬱を超えて‐黒人の発展に対するシェルビー・スティールの思想変遷
(選考理由)
アファーマティブ・アクション政策(黒人及び諸マイノリティーに対する積極的優遇政策)に黒人の立場からあえて反対の意思を表明した論客シェルビー・スティールについて、複数の著作を系統的に読解することでの思想変遷を綿密に跡づけたものです。対象者の著書の邦訳が1冊しかないため、他の著作については英文原著を丹念に読み解き、また関連する英文論文も十分に消化、活用しており、日本語論文に頼りがちな学際コース卒業研究の中では、その研究姿勢、達成度には抜きん出たものがあります。
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