2009年6月15日10時7分
アニメやマンガ、テレビゲーム……。「オタク文化」とも言われる日本の新しい芸術分野を発信する「国立メディア芸術総合センター」(仮称)の計画に賛否が渦巻いている。建設費はしめて117億円。予算は成立したものの、国会では「バラマキの象徴」と集中砲火を浴び、総選挙でも格好の攻撃対象になりそうだ。具体像はいまだ煮詰まっていない「アニメ・マンガの殿堂」、どうなる?
「野党からいろいろ揶揄(やゆ)されたが、正しいイメージで注目度を高めたい」。塩谷文部科学相は繰り返し口にする。
「揶揄」の代表格は、民主党の鳩山由紀夫氏の国会質問だ。「なぜ117億円も投じて巨大国営マンガ喫茶をつくるのか」。代表になる前の4月、麻生首相のマンガ好きに触れつつ口火を切り、他の野党も繰り返しやり玉に挙げた。ついには身内である自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」も「こんなハコモノは不要」と予算凍結を求める意見書をまとめた。
古くは鉄腕アトムに始まり、世界40カ国以上で放送されたドラゴンボール、「となりのトトロ」など一連の宮崎アニメ……。日本のアニメやマンガは「ジャパン・クール」として海外でも高く評価されている。
そんな背景に立つ今回の計画では、作品の収集や展示、調査研究、外国人観光客も含めた海外への発信などをうたう。コンピューター技術を駆使したメディアアートも柱の一つだ。推進派が4日に東京都内で開いた会合では、マンガ家の里中満智子さんが「古いマンガの原画の劣化はひどく、きちんと収集・保存しなければ後世の人が日本のマンガ文化を検証しようにもできなくなる」と必要性を訴えた。