東京都は、高次脳機能障害者の実態を把握するため、昨年10月に東京都高次脳機能障害者実態調査検討委員会を設置し、今年1月に医療機関等の協力を得て実態調査を実施した。
高次脳機能障害とは、病気や交通事故など様々な原因で、脳が部分的に損傷を受けたために生ずる、言語や記憶など知的な障害をいう。新しいことが覚えられない、注意力や集中力の低下、感情や行動の抑制がきかなくなるなどの精神・心理的症状が出現し、周囲の状況にあった適切な行動が選べなくなり、生活に支障を来たすようになる。
調査は、「医療機関調査」と「本人調査」の2つを実施、医療機関調査(通院患者調査、入院患者調査、退院患者調査)では、都内全病院全651か所・回収数419件(64.4%)、診療所287か所・回収数194件(67.6%)を対象とした。また、本人調査では、医療機関を受診している高次脳機能障害者938人・回答件数198人(21.1%)を対象とした。
医療機関調査結果
通院患者調査結果をみると、高次脳機能障害者は、男性が女性よりも多く、また、年代別では60歳以上の人が67.2%だった。発症の原因は、脳血管障害が81.6%、脳外傷が10.0%だった。年代別にみると、30歳代以上は脳血管障害の割合が脳外傷より高くなっており、60歳以上では脳血管障害者が89.9%を占めていた。
また、障害の内容では、行動と感情の障害44.5%(意欲の障害、抑うつ状態、不安、興奮状態など)、記憶障害42.5%、注意障害40.5%、失語症40.4%が多くみられた。
退院患者調査結果をみると、都内の高次脳機能障害者数は約49,000人と推計された。
本人調査結果
障害者手帳を1種類以上取得している人は82.3%だった。障害者手帳の種類別では、身体障害者手帳73.2%、精神障害者保健福祉手帳20.2%、愛の手帳1.5%だった。また、全体の44.9%が介護保険の認定を受けていた。
公的支援(年金、手当、生活保護)のいずれかを受給している人が81.8%で、平均受給額は月額151,540円だった。今後ぜひ必要とする支援サービスについては、相談支援、自立訓練、就労継続支援、ケアマネジメント、地域活動支援センターの順にニーズが高かった。
発症時に就労していた者は62.6%で、現在も就労している人は10.1%だった。また、現在就労していない人のうち、50.3%が就労を希望していた。今後の就労支援として、「職場に障害を理解してための支援を望む」が43.9%と最も多く、次いで「職業訓練を受けられる機関を望む」が39.9%だった。
|