今年11件、5年連続全国最悪か 発砲の連鎖やまず 抗争、内紛、企業威嚇… 暴力団封じ込め急務 県内
    
        
        2008年09月27日 20:21
        
    
    
    
    
    
 福岡県内で暴力団の仕業とみられる発砲事件が止まらない。27日までの発生件数は11件。他の都道府県を大きく引き離し、5年連続の全国ワーストが確実な情勢だ。指定暴力団の道仁会と九州誠道会の抗争のほか、企業を威嚇する目的の発砲が多発し、最近では指定暴力団工藤会関係者の射殺事件も起きた。銃声が響く「異常事態」はいつまで続くのか。
 警察庁によると、今年の発砲事件は8月末時点で全国で28件発生。福岡県は最多の8件で2位の東京都(4件)、3位の茨城県、大阪府、埼玉県(3件)を引き離している。その後も福岡県内で発砲は相次ぎ、27日までに11件。5年連続で全国最多となるのはほぼ確実で“銃声の街”という不名誉なイメージが定着している。
 多発する背景には、県内に指定暴力団を全国最多の5団体抱えるという特殊事情がある。道仁会が2006年5月に“跡目争い”から分裂。離脱した勢力が結成した九州誠道会との間で発砲・刺殺事件が相次いだ。今年3月、誠道会の「終結宣言」で一時は終息の兆しをみせたが、9月15日に大牟田市で誠道会系組幹部が射殺され、再燃が懸念されている。
 一方、06年末からは北九州市を中心に、暴力団排除を掲げる大手ゼネコンを狙った威嚇発砲が多発。今年に入ると工藤会関係者を狙った事件が続発した。須恵町で7月下旬に元組長が射殺されたほか、8月に北九州市八幡西区で系列の組長宅が発砲され、9月10日にも中間市で元幹部が射殺された。県警幹部は「7月に工藤会の元最高幹部が病死しており、内紛の可能性もある」とみて警戒している。
 同時多発的に発砲事件が発生する事態に対し、県警は総力を挙げて摘発を進める構えだが、今年起きた11件中、容疑者逮捕に至ったのはわずか2件で、「発生が多すぎて対応が追いつかない」(捜査幹部)との声も。建設業者の間には「ほとんどの発砲が未解決のため、暴力団側に“カネ”を渡した方が得策との動きもある」と批判がくすぶり始めている。暴力団封じ込めは急務で、ある県警幹部は「発砲の連鎖を絶つには、1件でも多く事件を解決するしかない」としている。
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(1)1月17日午後3時40分ごろ、福岡市博多区下川端町のビル前路上で、駐車場に入ろうとした大手ゼネコン九州支店の営業用乗用車に向け、発砲。
(2)2月21日午前7時15分ごろ、北九州市若松区安瀬の港湾土木工事会社の事務所玄関に発砲。
(3)2月24日午後7時55分ごろ、同市小倉北区大畠3丁目の路上で、工藤会系の元組員が射殺される。
(4)4月8日午前8時45分ごろ、同市八幡西区引野3丁目の不動産業男性宅に発砲。
(5)4月19日午後9時10分ごろ、飯塚市潤野の建設会社社長宅に発砲。
(6)5月2日午前2時55分ごろ、福岡市博多区須崎町のホテル前路上で、派遣型風俗店の女性従業員を迎えに来た男性運転手が客の男に撃たれ、重傷。
(7)7月30日午後4時50分ごろ、須恵町上須恵の自宅前で、工藤会系の元組長が射殺される。
(8)8月22日午前8時半ごろ、北九州市八幡西区藤原4丁目の工藤会系の組長宅で弾痕が見つかる。
(9)9月10日午後1時半ごろ、中間市桜台2丁目の自宅内で、工藤会系の元組幹部が射殺される。
(10)9月15日午前9時40分ごろ、大牟田市岬のマンション前路上で、九州誠道会の組幹部が射殺される。
(11)9月17日午前0時15分ごろ、北九州市小倉北区霧ケ丘2丁目で、自宅駐車場に止めようとした建設会社社長の乗用車に向け、発砲。 
=2008/09/27付 西日本新聞夕刊=