「宝船」の引き揚げ、今度は実現なるか?(下)
トジン実業はダイバーを動員し、日本から潜水艇を借りて探査を行ったが、ドンスコイ号の痕跡すら発見できなかった。ホン氏は「宝物船」の引き揚げの夢を果たせないまま、86年に世を去った。それから20年余り、今再びドンスコイ号の探査計画が持ち上がったのだ。
99年、東亜建設が「宝物船の探査」に乗り出した。東亜建設と海洋研究院は70億ウォン(現在のレートで約5億4900万円、以下同じ)の費用を投じ、5年間かけて海底の探査を行った。2003年には、鬱陵島の苧洞の東約2キロの、水深400メートルの地点でドンスコイ号とみられる船を発見した。ところが、東亜建設が資金難に陥ったため、引き揚げは断念した。
当時、探査グループのリーダーを務めた海洋研究院のユ・ヘス博士は「東亜建設は当時、支出するとしていた70億ウォンのうち29億ウォン(約2億2800万円)しか支払えず、作業は遅々として進まなかった」と話す。同院は予算さえ確保できれば、現在の探査機器や技術ですぐに探査や引き揚げを行うことは可能だ、との見解を示している。
今回引き揚げ作業を行う場合、最大のカギとなるのは、政府が関心を持っているかどうかだ、というのが海洋研究院側の考えだ。政府がドンスコイ号に、「宝物船」としてではなく、歴史的な観点からアプローチし、引き揚げた後は博物館を設立するなど、管理の方法について検討すべきだ、というわけだ。だが現在のところ、政府は特に関心を寄せていないという。
一部の海洋史の専門家たちは「ドンスコイ号はこの100年の間に、かなり腐食が進んでいるはずだ」との見解を示している。また、船体が引き揚げられ、金塊や金貨が発見されたとしても、ロシア側との間で所有権をめぐる争いに発展することも懸念される。外交通商部の関係者は「国際法上の先例を参考にしなければならないため、すぐに所有権の問題をうんぬんするのは難しい」と話している。
海洋研究院は「企業にであれ政府にであれ、業務を依頼された場合、引き揚げ作業に着手する」との方針だ。1999年から5年間にわたって行った探査の資料が残っている上、ドンスコイ号の発見も確実視されているためだ。しかし、以前探査権を有していた東亜建設はその後、プライム建設に吸収合併された。そのプライム建設は現在のところ、探査に関心を寄せていないという。
同院は現在、「政府が引き揚げに賛同するのが最も無難な方法だ」との見解を示している。「宝物船の探査」という不必要な誤解を招かずに、韓国の探査技術で歴史的な探査事業を行うという大義名分が立つためだ。また、外交紛争に発展したとしても、政府が当事者であればうまく処理できるとの指摘もある。
鄭炳善(チョン・ビョンソン)記者
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