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身内への甘い処分/県警調書偽造事件

2009年06月06日

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巡査長による供述調書などの捏造があった笠間署=笠間市寺崎

捜査報告書には、被害者が言ってもいないウソが書き連ねられていた。笠間署の巡査長(33)による虚偽有印公文書作成事件。身内の暴力に悩んでいた被害者は、警察が捜査を放置していたことを知るすべもなかった。県警は虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで巡査長を水戸地検に書類送検したが、警察としての処分は、最も軽い「戒告」だった。
 笠間署刑事課の巡査長(33)は04年8月、家族間の暴力の相談に訪れた笠間市の50歳代の女性から被害届を受けた。しかし、巡査長は「仕事の負担を減らしたい」と考え、「被害届を取り下げます」などとウソを書いた供述調書を作成した。その3年後、再び女性が相談に訪れ、笠間署は被害届の取り下げ工作が図られたことを把握した。
 巡査長が偽造したのは、被害者の供述調書で、裁判で証拠として採用される重要な捜査書類だ。その書類を警察官が捏造(ねつ・ぞう)し、被害者の筆跡をまねて署名もしていた。さらに、印鑑の印影までカーボン紙などを利用して複写していた。
 県警は5日、巡査長を最も軽い戒告にした理由について、「素直に事実を認めていることや、深く反省していること」を挙げた。当時の管理職の責任も不問にした。
 こうした身内の不祥事に対する甘さには、批判の声もある。
 警察取材に詳しいジャーナリストの大谷昭宏さんは、今回の処分について「警察官自身が楽をするために捜査書類を偽造したのだから、最低でも諭旨免職にすべきだ。かつての桶川ストーカー殺人事件と同様に、警察が受けた被害届をきちんと捜査せず、重大な結果をもたらしたケースは多い。県警の処分は全国的な基準とかけ離れており、見直すべきだ」と指摘する。
 一方、不祥事の公表は著しく遅れ、2年もの「隠蔽(いん・ぺい)」が続いた。同署は書類偽造を07年6月に把握したが、その後1年間も県警本部に報告しなかった。県警も、報告を受けてから女性に謝罪するまで約1年黙っていた。県警は被害者への連絡が遅れたことについて「捜査を優先させたためだ」と釈明している。

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