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二次被害が心配 証言へ配慮必要

2009年06月10日

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善養寺圭子さん

■性犯罪被害者を支援する善養寺圭子さんに聞く

 裁判員制度の対象事件には、強姦(ごうかん)致死傷や強制わいせつ致死傷などの性犯罪も含まれる。被害者が裁判員の前で証言を求められ、心理的負担が増す恐れもある。被害者支援の経験が豊富な社団法人「北海道家庭生活総合カウンセリングセンター」の善養寺(ぜんようじ)圭子副理事長(65)に聞いた。

 ――性犯罪の被害者には裁判員の候補者名簿を先に開示し、関係者を外すなどの対策を最高裁が打ち出しました。

 「それでも被害者が特定され、ネットなどに情報が漏れる二次被害の心配はある。その後のことも考えてほしい」

 ――法廷で被害者と裁判員の間も遮らない方向です。

 「別室からテレビモニターで証言できる方法は最低限必要。一般市民の裁判員と顔を合わせるため、出廷を拒む被害者が増えるかもしれない」

 ――被害者支援に影響は。

 「00年に被害者の法廷での意見陳述が認められ、訴えが直接届くようになり、社会はようやく性犯罪の重大性を認識し始めた。裁判員裁判で被害者が証言を避けたら、時代が逆戻りしてしまう」

 ――証言の負担は。

 「性犯罪は事件の記憶を体に刻み込み、苦しみを一生背負わせる魂の殺人事件。証言することで記憶がよみがえり、心の傷のかさぶたがはがされる。被害者は裁判官に話すのもやっとの思い。裁判員と近所で出くわさないか、興味本位で質問されないか。そんな不安がつきまとう」

 ――裁判員が被害者の訴えを直接聞くことも重要では。

 「裁判員は事件を理解するため、被害者に被害状況を詳しく聞く。しかし、カウンセラーでも性犯罪被害者の接し方は難しい。ちょっとした一言が傷つけることもある」

 ――具体的には。

 「裁判員が『なぜ、そんな時間にそんな場所を一人で歩いたのか』と質問すれば、『自分の落ち度を指摘された』と感じる被害者もいる。裁くことに重点が置かれる余り、被害者の心情がないがしろにされないか心配です」

 ――裁判に求めることは。

 「集中審理の裁判員裁判では、限られた時間で被害者から話を引き出すことが優先される。『不条理なことだから、話せる時に』が基本姿勢の被害者支援とは正反対。本音を言えば、性犯罪は対象から外した方がいい」

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