そうした空気をどこまで察したかは知らぬが、少し前マツダ・モーターヨーロッパが面白い特別仕様車を発売した。ずばり「GINZA」だ。
「マツダ6(日本名アテンザ)」の特別仕様である。ちなみに欧州で、デミオはマツダ2、アクセラはマツダ3、プレマシーはマツダ5の名前で販売されている。
マツダ6「GINZA」は、キセノンヘッドランプ、BOSEサウンドシステム、オートエアコンなど豪華装備を盛り込んだもので、いわゆるお買い得パック。価格は1万9999ユーロという、「ファッションセンターしまむら」「ドン・キホーテ」を彷彿とさせる戦略的数字である。最近の円安ゆえ単純に円換算すると約325万円にもなってしまう。しかし欧州の人の感覚を反映して1ユーロ100円として考えると、彼らには199万9千円といったところであろう。
広告には、「日本の繊細さの中に、喜び、快適さ、心地よい響き……」といったフレーズが並ぶ。ふんふん、なるほど。ところがクルマの上に目を移せば、「どら」を叩く人が描かれている。日本風情を通り越して、もはやアジアである。
たしかにマツダは2006年12月から2007年1月まで、銀座に「CX-7」用の期間限定ショールームを開設した。でもだからといって、欧州でこの広告を制作した代理店の人は、銀座の土を踏んだとは思えない。いや逆に、本物の銀座とイメージがかけ離れているのを知りつつ、フランスに増殖する日本OTAKU(この語も、しかるべき人の間では知名度が高まりつつある)を狙った計画的犯行なのか。興味が尽きない。