「多い時は1日に5回ぐらいブログを書き換える。パソコンを持ち歩いて、地元を往復する新幹線のなか、会合の合間、食事をしながらとか」
と自民党の山本一太参院議員は言った。5回の更新とは相当の発信量だ。
政界でインターネットのブログやメールマガジンがはやりだしてから10年近くなるが、政治活動を支える武器として次第に重要度を増してきた。<ザ・選挙>などのサイトで政治家のデータを提供している日本インターネット新聞社(東京・麹町)の竹内謙社長(前神奈川県鎌倉市長)は、
「国会議員の約4割がブログやメルマガを開設して、さまざまな政治情報を社会に送り届けている」
というのだ。
同社のサイト<国会議員ブログポータル>では、日替わりでブログの更新・アクセスのランキングが判明するが、最新の5日付でみると、更新のベスト5は、次の議員である(数字は過去1週間の更新数)。
(1)木俣佳丈(民・参)21回
(1)北沢俊美(民・参)21回
(3)早川忠孝(自・衆)20回
(4)高鳥修一(自・衆)16回
(4)山本一太(自・参)16回
また、アクセスのベスト5は。
(1)早川忠孝
(2)山本一太
(3)大串博志(民・衆)
(4)原田義昭(自・衆)
(5)鰐淵洋子(公・参)
議員名は毎日入れ替わる。両方のランキングでいつも上位に登場するのは、次の10議員だという。
山本、早川、高鳥、安井潤一郎(自・衆)、江田五月(無・参)、中川秀直(自・衆)、佐藤正久(自・参)、馬渡龍治(自・衆)、戸井田徹(自・衆)、保坂展人(社・衆)
このサイト担当の緑川綾子によると、
「なぜかブログ熱は自民党議員のほうが上ですね。トップは文句なく山本さん、内容が激しくて面白いのは河野太郎さん(自・衆)だけど、更新回数が2日か3日に1回とか少ないのでランクは下がる。中川秀直さんも精力的で、永田町では山本、中川、河野を<ブログ御三家>と呼んでいるそうです」
という話だ。山本の<気分はいつも直滑降>、中川の<トゥデイズアイ>、河野の<ごまめの歯ぎしり>が御三家のブログ名である。
5月25日付の河野のブログをみると、
<道路の空洞化をめぐる不正を調査するための第三者委員会が先週立ち上がったが、委員会が行われている時に、国土交通省はせっせと不正の証拠を隠滅していたのである。チックショー>
などと、なるほど激しい。ブログは常時、政治と国民を直結させる有力な発信装置になりつつある。目下、<ブログ王>ともいえる山本は、
「政策や主張も書くが、日々の生活、政治家の息づかい、肉声をオンタイムで届ける。臨場感をもって永田町の空気が伝わるんです。発信するだけでなく、一種の抑止力として働く場合もある。私のアクセス数は月に約40万、1日平均1万3000ぐらい」
と効用を強調した。
それにしても、アクセス40万はすごい。山本に電話取材した日のブログにはもう取材経過が記され、そのあと、
<マスコミ人(注・私)は「すごいなあ」と感心していた。いや、まだまだダメです。月に100万アクセスのレベルまで到達した段階から「世論に対する一定の影響力」が生まれるそうだから>
と書き込まれていた。テンポが速い。
いまや、テレビ、ケイタイ、そしてブログが政治家にとって新三種の神器? 機械に弱い人種にはつらい時代だが。(敬称略)=毎週土曜日掲載
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毎日新聞 2009年6月6日 東京朝刊
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