「雑」という漢字の熟語を思い浮かべてみた。雑事、雑用、雑音、雑念、粗雑。梅雨入りしているので、雑菌が気になる。「不要」「邪魔」とか「いい加減」「取るに足りない」といったマイナスイメージが先に立つ。
ところが、「雑」という字は分解すると「衣」と「集」になるそうだ。衣を染めるのに多くの種類の草木の染め汁を使ったので、さまざまな色合いの衣ができた。そこで「多くの色が集まりまじること」という(白川静著「常用字解」)。
本来は「まじる」であり、「多様」「いろいろ」といった意味合いも生まれたようだ。確かに雑煮や雑炊にはいろいろな具が入っている。雑誌には多彩な情報が掲載されている。
中国でおなじみの雑技団は、多様な芸を披露してくれる。つまらない演技どころか極めて高度で目を見張らされる。
高度といえば、乗用車市場でブームを呼んでいるハイブリッド車。ハイブリッドとは「雑種」や「異質なものの混成物」の意だ。ガソリンエンジンと電気モーターが「まじる」ことで、環境への負荷を減らす先進技術が生まれた。
雑学とは無駄な知識の集まりのように思えるが、意外な発見が面白い。とりとめのない雑談の中から、思わぬアイデアが生まれることもある。「雑」には人生を楽しくする効用がある。