【ワシントン草野和彦】イランとの関係改善に意欲的なオバマ米大統領は、年末をめどに対話路線の感触をつかむ考えだ。しかし、核開発で強硬姿勢をとり続けるアフマディネジャド大統領の再選によって、オバマ政権が対話から圧力への転換を検討する時期が早まることもありそうだ。
オバマ大統領は先月18日、イランとの関係見極めのめどを「年末」と表明した。隣には会談を終えたばかりのイスラエルのネタニヤフ首相がいた。イラン核施設への軍事攻撃論もくすぶるイスラエルに対し、「年末までは動くな」とクギを刺したと推測されている。
対話路線の見極めは、国際原子力機関(IAEA)や国連の総会がある9月がひとつの目安との声もある。これを過ぎてもイランが国連安保理常任理事国とドイツの6カ国会合や、米国との直接協議に応じるそぶりを示さない場合、「オバマ政権の方針転換もあり得る」(核問題に携わる外交筋)というわけだ。
ブッシュ前米政権が敵視した国々に「対話」のボールを投げるのがオバマ流だが、「圧力のための対話」の側面もある。ボールが戻らなければ、圧力をかける口実になるためで、北朝鮮への強硬路線が典型だ。米中央情報局(CIA)のパネッタ長官は「米国がイランにどう対処するかという重要なシグナルだ」と指摘する。
ただ、アフガニスタンへの米軍増派を控えるオバマ政権と、アフガンの旧支配勢力タリバンを敵視するイランの間には、利害の一致点もある。そのため、米国自身が「対話」と「圧力」のはざまで悩む局面も出てきそうだ。
毎日新聞 2009年6月13日 19時50分