【テヘラン春日孝之】イラン大統領選は13日、開票が進み、国営イラン通信によると、保守強硬派のアフマディネジャド大統領(52)が投票総数の過半数を獲得、最有力対抗馬の改革派のムサビ元首相(67)など3人の候補を破り、再選を果たした。任期は4年。核開発問題などで強硬姿勢を示す大統領が再選されるかどうか国際社会も注目したが、国民は「続投」を選択した。
アフマディネジャド陣営の選対幹部は「大統領はすべての国民の代表である」と事実上の勝利宣言を行った。
内務省によると、投票率は70%以上。13日午前7時前(日本時間同11時半前)現在、開票率約80%での得票率は▽アフマディネジャド大統領約65%▽ムサビ元首相約32%▽レザイ元革命防衛隊最高司令官(54)約2%▽カルビ元国会議長(71)約0・9%。
第1回投票で当選を決めるには、投票総数の過半数を得ることが条件だったが、大統領はムサビ氏に圧勝した形だ。ムサビ氏は開票前に会見し「私は必ず勝利する。それ以外の結果になれば、不正があったと確信する」と述べ、当局に公正な開票作業を要請していた。このため、同氏側が開票結果を受け入れず、抗議行動を起こす可能性もある。
アフマディネジャド大統領は05年初当選。地方や低所得者層を重視する経済政策を進めた。米欧の圧力を無視する形で核開発を推し進め、「国家の威信を高めた」と強調。こうした「実績」が評価された。ムサビ氏陣営は大統領再選阻止に向け組織的な選挙運動を展開したが、大統領の実績や人間性を否定する「ネガティブキャンペーン」が裏目に出た可能性もある。今回の選挙戦ではテレビ討論を機に、特に「自由」を求めるムサビ氏支持の若者によって前例のないお祭り騒ぎとなり、最高指導者ハメネイ師が「行き過ぎ」を警告する騒ぎにもなった。
投票率は前回63%を大きく上回った。指導部は「高投票率はイスラム体制をより強固にする」と投票を呼び掛けていただけに、「体制への信任の高さを裏付けた」と評価している。
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かじ職人の四男としてテヘラン近郊で生まれる。テヘランの科学産業大で交通工学の博士号を取得。イラン・イラク戦争中の86年、革命防衛隊に入り参戦した。北西部アルデビル州知事を経て03年にテヘラン市長。05年6月の大統領選で初当選した。家族は妻と2男1女。
毎日新聞 2009年6月13日 東京夕刊