医師不足に悩む宮崎県延岡市に、宮崎市の勤務医の榎本雄介さん(34)が、診療所を新たに開設することが決まった。市は新規開業する医療機関に対する独自補助を5月から始めたが、その適用第1号となる。榎本さんは「地域づくりを医療面からサポートしたい」と張り切っている。
榎本さんは宮崎市出身で、宮崎医大(現宮崎大医学部)を卒業。専門は外科。同医大付属病院や佐世保市立総合病院(長崎県)を経て2007年から宮崎市の民間病院に勤めていた。
研修医時代、宮崎市内に住む祖母が孤独死し、「幸せな最期を迎える医療を実践したい」と考え、地域医療に関心を持った。延岡市は妻の小雪さん(33)の地元で、小雪さんの知人の看護師から医師不足の現状を聞き、その後、先輩医師の話も聞くなどして開業を決めた。同市の熱心な誘致も「とても心強く、後押しになった」という。
診療所は同市のうどん店跡の建物を改装。「大貫診療所」として16日に開業する。市地域医療対策室は補助金500万円の交付を決め、「とてもうれしいこと。地域医療再生に力を貸してほしい」と歓迎している。
榎本さんは「人のつながりが濃密な延岡なら、病気を治すだけではない医療ができると思う。市民から頼られる医者になりたい」と話している。
=2009/06/13付 西日本新聞朝刊=