きょうのコラム「時鐘」 2009年6月13日

 鳩山大臣のクビが飛んだ前日、月探査機「かぐや」が観測を終えて月面に落下した。何の関係もないが、俗世のごたごたに宇宙の出来事が思い浮かぶ

国際ステーションに長期滞在する若田光一さんが先ごろ、子どもたちの注文で「おもしろ実験」を見せてくれた。宇宙で腕相撲ができるだろうか。同僚と挑戦したら、腕を軸にして2人の体がぐるぐる回ってしまった

タオルを使った綱引きも試みた。力を入れた途端、互いに相手に引っ張られて鉢合わせをする始末。地に足を着けて踏ん張ることのできない無重力では、奇妙なことが起こる

日本郵政社長の進退をめぐる騒動に、そっくりではないか。腕力勝負を試みたが、さっぱり腰が定まらなかった。周囲に促されて首相と大臣が綱引きに及ぶと、双方がぶつかって頭に大きなこぶをつくってしまった

「正しいことが通らないことがある」とは、クビを失った大臣の捨てぜりふ。マユにツバして拝聴するが、世間とは違う「無重力空間」を漂うような政治家たちである。もっとも、宇宙船とは違い、利害や打算の「雑菌」は、うようよいそうではある。