コラム

2009年06月11日号

【検察と政治】
時事ドットコムが報じた民主党第三者委委員会の報告書要旨を本誌編集長が斬る


●時事ドットコム配信記事 
時事ドットコムは10日20時38分、「民主第三者委の報告書要旨」という見出しで次の記事を報じた。
「民主党の「政治資金問題をめぐる政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」が10日にまとめた報告書の要旨は次の通り。
 【はじめに】=略。
 【検察の捜査・処分をめぐる問題】多くの点で疑念がある▽そもそも政治資金規正法違反が成立するか▽罰則を適用すべき重大性・悪質性があるか▽いきなり逮捕する手法が適切か▽自民党議員の扱いと公平を欠いていないか▽検察は重大な政治的影響を生じさせたことに説明責任を負っている。
 【政治資金規正法の在り方】総務省に形式審査権しか認められていない以上、要求される政治資金収支報告書の記載の真実性は形式的にとどまる▽警察・検察が総務省と異なる独自の解釈で強烈な人権規制行為に及ぶのはバランスを失している▽非刑罰としての制裁金の導入などを検討すべきだ。
 【検察・法務省の在り方】議院内閣制では政府・与党が一体であり、野党への権限行使に慎重な配慮が要求される▽権力行使の正当性について検察の踏み込んだ説明が求められる▽法相は高度の政治的配慮から指揮権を発動し、検察官の権限行使を差し止め、国民の判断に委ねる選択肢もあり得た。
 【報道の在り方】検察や関係者を情報源とする報道が大きく扱われた▽逮捕容疑を超えた「巨額献金事件」といった決め付けなど「有罪視報道」が展開された▽ 検察の捜査の在り方への批判が十分行われなかった▽衆院選が取りざたされる中、通常以上の慎重かつ多面的報道が求められたが、そうした姿勢が希薄だった。
 【政党の危機管理の観点からの分析】民主党の対応には危機管理の観点から問題があった。政治家個人と党首の立場を切り離せず、事態の悪化につながった。
 【政治的観点から見た民主党の対応】民主党幹部から「国策捜査」という言葉が使われたのは適切でなかった▽首相になり得る立場として、国民への説得力を備えることは大変重要。小沢一郎氏にはもっと積極的にマスコミに訴えかける姿勢があってもよかった。
 【おわりに】民主党が、政権交代を阻止しようとする検察の意図的な権限行使やマスコミ報道の被害者的立場にあると受け止めるのは適切でない▽今回のような事件で政党政治に脅威が生じないよう、構造自体を改めるべきだ。超党派的な立場から取り組むのが望ましい。(2009/06/10-20:38)

●本誌編集長が斬る
 民主党が小沢氏の秘書の起訴を受けて第三者委員会を設置した背景には小沢氏の次の2つの言動がある。
 小沢氏は大久保秘書が逮捕された記者会見で
、『総選挙が取りざたされているこの時期において、非常に政治的にも法律的にも不公正な国家権力の行使と感じている」、「この種の問題で逮捕・強制捜査というやり方は民主主義を危うくすると考えている」「こじつけたような理由で検察権力の発動は非常に公正を欠くと思う」、「起訴などないと信じております」「遠からず嫌疑は晴れると信じている」とも語った。(読売新聞3月4日夕刊)こと。

 小沢氏はそれにとどまらず、産経新聞によれば「小沢氏は西松建設の違法献金事件で秘書が起訴される5日前の19日夜、鳩山由紀夫幹事長と都内の日本料理店で会談し、事件について、「検察の対応はあまりにもひどい。自分の身がどうなろうと構わないが、戦うことはあきらめない。検察が(24日に)どういう判断をしようと、徹底して戦う」と述べ、東京地検が起訴に踏み切った場合でも、公判を通し、無罪を主張していく考えを示した。
 そのうえで、「政権交代をして検察権力の乱用を一掃しなければならない」と、次期衆院選後、政権を獲得すれば、東京地検のあり方を見直すと強調した」という。「検察が(24日に)どういう判断をしようと、徹底して戦う」は自由だが、「政権交代をして検察権力の乱用を一掃しなければならない」と、次期衆院選後、政権を獲得すれば、東京地検のあり方を見直すと強調した」

 24日、大久保秘書は起訴された。民主党は代表続投を主張している小沢代表の主張を正当化する
必要性に迫られた。そこで設置されたのが有識者4人から成る「政治資金問題をめぐる政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」だ。はじめから検察捜査に疑念を示す目的があったのである。

だから、報告書もその目的に沿った内容となったが、それでも有識者会議と称するだけあって、「政治家個人と党首の立場を切り離せず、事態の悪化につながった。」「民主党幹部から「国策捜査」という言葉が使われたのは適切でなかった、首相になり得る立場として、国民への説得力を備えることは大変重要。小沢一郎氏にはもっと積極的にマスコミに訴えかける姿勢があってもよかった。」ことは認めざるをえなかった。それでないと第三者機関とはいえなくなるからだ。
 それにしても、自民党の小沢批判の弱さにはとても政権維持の意欲が感じらわれない。

小沢氏批判は民主党の第三者委員会よりまだ、弱い。末期の吉田内閣を支えた人たちとは雲泥の差だ。このままでは自民党は民主党に政権を許さざさざるをえないと思う。それに比較して小沢氏の寝技師ぶりはさえていた。自民党には代表を引いても永久的闇将軍の地位を確保した小沢氏に勝る策士がいない。小沢氏と第三者委員会とは考え方が違っていたと私はみる。私は昭和40年夏、新装なった自由民主会館で数十人の党職員に混じって全国組織委員長が特別許可した者として自民党中央政治大学院で「伝統の中に創造」を学んだ体験者として情けない限りである

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