「健康日本21」は、健康寿命の 延伸を目的としています。 |
しかし反面、生活習慣病の発症率は高齢になるほど高まり、これに起因して 寝たきりや痴呆になるお年寄りの増加が深刻な社会問題となっています。 国民健康づくり運動「健康日本21」は、こうした背景から、日常生活を自立して 元気に過ごせる期間、すなわち健康寿命をのばし、平均寿命との乖離を縮めることを 目的に展開されています。 このページでは、WHO(世界保健機関)の調査結果にもとづき、血管年齢・骨年齢・ 腸年齢を若く保ち、健康寿命をのばすための食生活のポイントをまとめています。 Q&Aでは、日本人が苦手としがちな牛乳・乳製品をクローズアップし、はっ酵乳の とり方について聞きました。 |
明るく元気な老後を迎えるために 食生活を見直しましょう。 |
WHOが提唱した新しい指標で、病気や痴呆、衰弱などで要介護状態となった期間を、 平均寿命から差し引いた寿命のことです。 長寿国では一般に、平均寿命と健康寿命の開きが長く、わが国でも最晩年に寝たきりなどに なる期間が国民平均6年以上に及んでいるのが現状です。 |
健康寿命を左右する3つの「年齢」 |
わが国では、老年期痴呆の原因の3割以上を脳卒中が占めています。 食生活の改善により、血管年齢を若く保ち、脳卒中の温床となる動脈硬化を防げば、このタイプの 痴呆を確実に減らすことができます。 寝たきりの二大原因は、脳卒中と骨折(肯粗髭症)です。 寝たきりを防ぐには、血管年齢とともに、骨年齢も若く保つことが重要です。 加齢に伴い、腸内ではビフイズス菌などの善玉菌よりも、悪玉菌が優勢となり、免疫力の低下をまねき、 感染症やがんなどのリスクが高まります。 腸内を善玉菌優勢に保つこと、すなわち腸年齢を若く保つことも、健康寿命の延伸に欠かせません。 |
マサイ族のパラドクス 乳脂肪を多量にとると、常識的には血中脂質の上昇や肥満などが心配されますが、マサイ民族は、 肥満度(BMl)、血圧、コレステロールなどの健康指標がすべて正常です。 このバラドクスを解く鍵の1つは、食塩の摂取。食塩にはコレステロールの吸収を助ける作用があり ますが、マサイ民族には食塩をとる習慣がありません。 また、牛乳はひょうたんに入れて持ち歩くうちに発酵し、実際には多くをはっ酵乳として摂取しています。 このはっ酵乳からは、乳製品にはめずらしい植物性乳酸菌やポリフェノールが検出されました。 食塩をとらないこととはっ酵乳の摂取が、マサイ民族の高い健康水準を支えてい るのです。 |
働き盛りの食卓に、ともすると忘れがちな牛乳・乳製品。はっ酵(ヨーグルト)の機能性や選び方のコツなどを聞きました。 回答:京都大学名誉教授・金城学院大学教授 家森 幸男 先生 |
世界の長寿地域では、牛乳・乳製品をどのようにとっていますか? コーカサス地方では、どこの家庭でも、自家製のはっ酵乳を丼のような器で朝昼晩と飲んでいます。 南米のビルカバンバでは、塩分の少ないフレッシュチーズをふんだんに食べています。 穀物文化のわが国は、魚、大豆、野菜、海藻を食卓にとり入れてきましたが、健康寿命をのばすには、 長寿地域の乳文化に学び、乳製品の積極的な摂取が必要です。 |
はっ酵乳の栄養特性について教えてください? 生きた乳酸菌をとれるほか、発酵の過程で、牛乳の栄養価値が高まる点がはっ酵乳の特長です。 乳酸が腸内をカルシウム吸収に適した弱酸性の環境にしてくれますので、カルシウム吸収率は 牛乳よりはっ酵乳がすぐれています。 また、アミノ酸の吸収も牛乳にくらべ、非常に速やかです。 牛乳を飲むと下痢や腹痛をおこす例(乳糖不耐症)がありますが、はっ酵乳なら、乳糖の一部が 分解されているうえ、乳酸菌由来の乳糖分解酵素が含まれているので、安心です。 |
はっ酵乳を買う際のポイントは? 市販のはっ酵乳は糖分を加えたものが一般的ですが、糖類無添加のものを選び、 好みに応じてフルーツなどを添えるといいでしょう。私はきな粉20gを加えた自家製ヨーグルトを 200ml、毎朝飲んでいます。 酸味が苦手な方には、マサイ民族が飲んでいるのと同じ植物性乳酸菌(L.プランタラム菌)を 利用した無糖タイフのはっ酵乳なども市販され、やさしい味で人気を集めています。 |
植物性乳酸菌とはどんなものですか? |
野菜、大豆、米などをエサにして増える乳酸菌で、私たちの食生活になじみの深い 漬物やみそ、清酒などはこれを利用した発酵食品です。 はっ酵乳は動物の乳をエサにして増える動物性乳酸菌を用いるのが普通で、マサイ民族の飲んでいる はっ酵乳は非常にまれな例ですね。 植物性乳酸菌でつくるはっ酵乳は、発酵がゆるやかに進みますので、酸味がまろやかで、 賞味期間も長いのが特長です。 |
植物性乳酸菌の効果は、動物性乳酸菌より弱いのでは? |
植物性乳酸菌(L.プランクラム菌)を用いたはっ酵乳を毎日200ml飲んだ試験によると、 腸内細菌叢におけるビフィズス菌の占有率が3倍に増加し、動物性乳酸菌を用いたはっ酵乳よりも、 むしろ強い効果が明らかにされています。 動物実験では、食中毒の原因菌(サルモネラ菌)の感染を植物性乳酸菌の摂取が防御することが 確認されています。 これはビフィズス菌の増加により、腸内が病原体の増殖しにくい弱酸性の環境になるためと考えられます。 さらに、ビフィズス菌の菌体そのものにも免疫賦活物質が含まれ、小腸の免疫系を刺激して体の免疫力を 高めてくれますので、働き盛りからお年寄りまで、毎日の習慣としておすすめできるでしょう。 |