「いずれ歴史が証明」鳩山邦夫総務相が辞任

父と祖父の墓に、総務相辞任の報告をする鳩山邦夫氏 Photo By 共同

　鳩山邦夫総務相が１２日、日本郵政の西川善文社長退任を求める自らの考えが受け入れられなかったとして、麻生太郎首相に辞表を提出、受理された。事実上の更迭となる。鳩山氏は「世の中、正しいことが通らないことがある。それが今だ」と語気を強めた。後任の総務相は佐藤勉国家公安委員長が兼任する。麻生内閣の閣僚辞任はこれで３人目。鳩山氏は離党、新党結成について「私や仲間たちはこれから勝負になる」と含みを持たせた。

　「正しいことが通用しなかったら潔く去るべきだ」「いずれ歴史が私の正しさを証明してくれる」−−辞表提出後、官邸で１００人近くの報道陣に囲まれた鳩山氏。これまでの強硬で声高な鳩山節は影を潜め、感情を抑えるような口調で、自身の正当性を主張し続けた。“盟友”麻生首相に対しては「今回の判断は間違っている」とバッサリ。離党については「仲間たちと相談する。さまざまな仲間から激励を受けている」と新党結成の可能性についても含みを持たせた。最後に「自民党政権に見切りをつけてはいないが“政府に尋問の筋これあり”の心境だ」。西郷隆盛が西南戦争で掲げた挙兵理由の一節を引用し官邸から去った。

　午前に続き午後に行われた２回目の首相との会談で辞表を提出、受理された。鳩山氏は昨年の自民党総裁選で首相陣営の選対本部長を務めるなど首相の側近議員で、首相からは「（信念を）曲げられないとのことなのでやむを得ない。悲しく、残念だ」と了承されたことを明かした。

　官邸を出た鳩山氏は東京・谷中の谷中霊園に直行し、祖父の一郎元首相、父の威一郎元外相の墓に手を合わせ辞任を報告。その後は事務所スタッフからの誘いを受け都内の寿司店へ。この日生まれた２人目の孫（男児）について、うれしそうに話すなどリラックスした様子だったという。

　辞任時期について、鳩山氏に近い関係者は「絶妙なタイミング。内閣から外れれば堂々と地元で選挙活動ができる。演説でも信念を貫いた鳩山をアピールできる。まさに好材料」と作戦勝ちを強調。来るべき再編での発言基盤を確保できるとの計算もあったようだ。

　今後の焦点の１つは“鳩山新党”への広がり。「自民党への出戻り組なのにスタンドプレーが多くて、党内に味方が少ない」（旧田中派の元秘書）と評されており、「鳩の乱」への同調者は広がらないと見られていたが、自民党の戸井田徹厚生労働政務官が辞表を提出。官邸関係者は、自民党の吉川貴盛衆院議員や民主党の牧義夫衆院議員ら鳩山氏の秘書経験がある“鳩山チルドレン”が衆参合わせて７人いることから「多くの世論は麻生さんより鳩山さん支持だろう。選挙の弱い現職がこの空気を読んで行動することも十分考えられる。動向は無視できない」と話した。

[ 2009年06月13日 ]